篠原美琴

森霧媚薬、義弟の抑えぬ視線(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:木陰湿気の視線

 悠人の視線が、私の肌をなぞるように留まる。霧のヴェール越しに、熱い息が伝わる気配。木幹に凭れたまま、私は動けない。体内の熱が、波となって下腹部を震わせる。ハーブの苦味が、舌の奥に残り、甘い痺れを呼び起こす。森の奥は、さらに湿気を帯び、平日の夕暮れの空気が重く肌に絡みつく。

 ゆっくりと体を起こす。足が、わずかに震える。悠人は一歩、近づかない。ただ、そこに立つ。肩のラインが、霧にぼやけ、首筋の脈動が目に入る。二十八歳の男の体温が、触れぬ距離で空気を温める。私は視線を逸らさず、彼の瞳を捉える。そこに、揺らぎ。普段の穏やかな義弟の目ではない。熱が、瞳の奥で渦巻く。

 言葉はない。沈黙が、森の湿った空気を濃くする。私たちは、互いの息遣いを数えるように、ただ見つめ合う。歩き出すのは、私の方だった。木々の間を抜け、道なき道を進む。霧が濃くなり、足元は落ち葉と苔で柔らかく沈む。悠人の足音が、後ろから続く。一定の間隔を保ち、決して追いつかない距離。

 体内の疼きは、募る一方。服の下、肌が熱く火照り、歩くたび太腿が擦れ合う感触が鋭くなる。下腹部の奥、秘めた部分が甘く収縮し、湿り気を帯びる。野外の冷たい風が、首筋を撫でるのに、対照的に、内側が溶けるように熱い。ハーブの効果か、それともこの沈黙か。視線を前方に固定しても、背後の気配が、肌を震わせる。

 森は深くなる。木々が密集し、枝葉が頭上を覆う。夕闇が忍び寄り、霧が白く渦を巻く。雨上がりの土の匂いが濃く、湿った空気が肺に染み込む。私は、ついに足を止めた。巨木の陰──太い幹が、苔に覆われ、影を落とす。そこに寄りかかる。背中が冷たい幹に触れ、対比的に全身の熱が際立つ。

 息が、浅く乱れる。胸の上下が、服の上からでもわかるほど。悠人が、ゆっくり近づく。触れぬ距離──二メートルほど離れ、木陰の端に立つ。彼の視線が、私の全身を這う。唇から、首筋へ、胸元を滑り、腰の曲線をなぞる。熱い。視線だけで、肌が疼く。私の手が、無意識に木幹を握りしめる。指先が白くなるほど。

 彼の喉が、僅かに鳴る。息遣いが、聞こえるほど近く感じる。霧の粒子が、二人の間を漂い、熱を運ぶ。私は目を伏せない。三十歳の私の体が、二十八歳の義弟の視線に晒される。血のつながらぬ関係──それが、今、曖昧な膜を溶かす。ためらいの余白に、甘い疼きが広がる。下腹部が、再び収縮。秘めた奥が、熱く湿り、震えを呼ぶ。

 悠人の手が、わずかに動く。ポケットに差し込み、抑えるように握る仕草。瞳が、揺れる。私の唇が、乾く。舌で湿らせる動作が、彼の視線を捉える。沈黙が、心理を蝕む。互いの欲が、言葉なく伝わる。触れたい、でも触れぬ。この距離が、甘い拷問のように体を支配する。野外の湿気、霧の冷たさ、木々のざわめき──すべてが、熱を増幅させる。

 私の膝が、僅かに内側へ寄る。太腿の内側が、擦れ、甘い痺れが背筋を駆け上がる。悠人の息が、長くなる。胸板が、上下する。視線が、下へ──腰から、脚のラインへ落ちる。そこに、渇望の光。私は、木陰に深く寄りかかる。体が、わずかに開くように。沈黙の中で、合意の気配が芽生える。ためらいが、溶け始める。

 霧が、木陰を包む。夕闇が深まり、森の奥で二人の影が重なる。悠人の足が、一歩、近づく気配。息遣いが、熱く迫る。体内の疼きが、頂点へ──この野外の沈黙で、何が解き放たれるのか。

(第3話へ続く)