緋雨

妊婦風俗の、息潜む指遊(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:膨らみの下で息を潜める視線

 平日夜の街は、雨の雫がアスファルトを叩く音だけを響かせていた。浩太は三十歳の男として、仕事の疲れを紛らわせる術を求め、いつものように路地裏の扉をくぐった。妊婦専門の風俗店──ここは、街の喧騒から隔絶された、静かな隠れ家だった。受付の女性が無言で鍵を渡し、彼を奥の部屋へ導く。エレベーターの扉が閉まる瞬間、浩太の胸に微かな緊張が走った。期待ではない。ただ、未知の重みに似た何か。

 部屋は薄暗く、窓のない空間に柔らかな間接照明が浮かぶだけ。空気は微かに甘く、湿った体温の気配を孕んでいた。ベッドの上で、彩は静かに座っていた。二十八歳、妊娠八ヶ月。彼女の体は、柔らかな布地の下で優しく膨らみ、部屋の静寂を一層深くしていた。黒いワンピースが肌に寄り添い、肩紐がわずかにずれ、鎖骨のラインを露わにしている。浩太が入室すると、彼女はゆっくりと顔を上げた。視線が、互いの瞳に絡みつく。

 言葉はなかった。浩太はベッドの端に腰を下ろし、彩の隣に体を寄せる。距離は、息が触れ合うほど近い。彼女の腹は、布地越しに温かく膨らみ、静かな鼓動を伝えてくるようだった。浩太の視線は、自然とそこへ落ちる。彩の瞳もまた、彼の顔を、首筋を、ゆっくりとなぞる。沈黙が、空気を重く淀ませる。雨音が遠くで響き、部屋の壁に反響するだけだ。

 彩の唇が、わずかに開く。吐息が、浩太の頰を撫でた。彼女はゆっくりと手を伸ばし、自分の腹の膨らみに触れる。指先が、布地の上を滑る。浩太は動かず、ただ見つめる。心臓の音が、互いの間で同期し始める。静かだ。あまりに静かで、耳鳴りのように息遣いが聞こえる。彩の指は、腹の曲線を優しく辿り、脇腹へ。肌の温もりが、布を通して伝わる気配が、浩太の心にまで染みてくる。

 「触れても……いい?」 浩太の声は、囁きに近かった。彩は頷いた。視線を外さず、ただ小さく首を傾げるだけ。合意の沈黙。浩太の手が、ゆっくりと彼女の腹に置かれる。温かい。柔らかく、張りのある肌の感触が、手のひら全体に広がる。胎動のような微かな動きが、内側から伝わってくる。彩の息が、少し乱れる。浩太の指が、腹の膨らみをなぞる。円を描くように、優しく、抑制された動きで。

 部屋の空気が、張り詰める。彩の瞳が、浩太の手を追う。彼女の指は、今、自分の太腿へ移っていた。内腿の柔らかな部分を、爪の先で軽く引っ掻くように。ゆっくりと、円を描きながら上へ。布地の裾が、わずかにめくれ、肌が露わになる。白く、艶やかな太腿。浩太の視線が、そこに落ちる。息が、熱を帯びる。彩の指は止まらない。膝から内側へ、徐々に深く、肌をなぞる。彼女の吐息が、甘く漏れる。

 浩太の手は、腹の上で静止したまま。彩の動きを、ただ見つめる。指先が、太腿の付け根近くで止まり、軽く押した。布地の下の秘められた部分へ、触れる気配。彼女の体が、微かに震える。浩太の胸に、甘い疼きが広がる。視線が絡み、息が混じり合う。言葉はない。ただ、互いの体温が、静寂の中で高まる。彩の指が、再び動き出す。ゆっくりと、自分の肌を這うように。

 雨音が、激しさを増す。部屋の照明が、彼女の肌を淡く照らす。浩太の指が、腹の膨らみを優しく押す。彩の瞳が、細められる。息遣いが、近づく。指の動きが、わずかに速まる気配。張りつめた空気に、甘い緊張が染み渡る。まだ、何も起こっていない。ただ、視線と息と、指の微かな動きだけ。それなのに、体が疼く。奥底から、熱いものが込み上げる。

 彩の指が、布地の縁に触れる。ゆっくりと、下へ滑り込もうとする。浩太の視線が、それを追う。沈黙が、頂点に達する。次は──その指が、もっと深く。

(了)

 次話:「指の深淵、息の同期」