藤堂志乃

夫の友に潜む妻の疼き(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:肩に這う指の甘い背徳

 雨の音が、窓ガラスを細やかに叩いていた。平日暮れ時のアパートは、街の喧騒から遠く、静かな闇が早く訪れる。美咲はキッチンのシンクに寄りかかり、グラスを拭く手を止めた。あの夜から三日。拓也の指先の感触が、掌の奥に残り、夜毎に疼きを呼び起こす。浩一は今日も残業だ。夫の不在が、こんなにも甘い空白を生むとは。

 インターホンが鳴った。モニターに映るシルエットは、予想通り彼だった。黒いコートに雨粒を纏い、街灯の淡い光が肩を照らす。美咲の胸に、熱い波が広がった。ドアを開けると、湿った空気が流れ込み、二人の視線が即座に絡みつく。

「美咲さん、雨の中失礼。浩一に用があってね」

 拓也の声は低く、雨音に溶けるように柔らかい。美咲はコートを預かり、リビングへ導く。だが今夜は違う。夫の知らぬ部屋――書斎の扉を、そっと開けた。浩一のデスクがある狭い空間。棚に並ぶ本が、二人の影を優しく受け止める。彼女は扉を閉め、鍵をかける音が、静かに響いた。

 拓也の眉がわずかに上がる。だが、拒む気配はない。美咲はデスクの前の椅子を勧め、自分は隣に腰を下ろす。距離が近い。膝が触れそうなほど。雨の匂いが彼の体温と混じり、部屋を重く満たす。

「浩一の資料、預かってるんです。見てみますか」

 言葉は事務的だ。だが、美咲の視線は違う。大胆に、拓也の首筋を這うように落ちる。シャツの襟元から覗く肌が、雨の湿り気で微かに光る。あの指先の記憶が、彼女の内側を掻き乱す。妻として抑えていた渇望が、痴女めいた衝動となって膨張する。浩一の親友。この男を、夫の知らぬところで味わいたい。

 拓也が資料に目を落とす隙に、美咲の手が動いた。ゆっくり、肩に這わせる。指先がシャツの生地をなぞり、筋肉の硬さを確かめるように。痴態めいた仕草。彼女の息が、わずかに乱れる。拓也の体が、微かに強張った。

「美咲さん……」

 彼の声は囁きに近い。視線を上げると、瞳が熱く揺れている。拒絶ではない。誘われるような、深み。美咲の指が、肩から首筋へ滑る。肌に直接触れる瞬間、電流のような熱が互いを繋ぐ。部屋に、抑えられた吐息が満ち始める。深く、熱い息づかい。雨音が、それを優しく覆い隠す。

 彼女の内側で、淫らな想像が渦巻く。この肩を掴み、唇を押しつけたい。シャツを剥ぎ、逞しい胸に舌を這わせたい。浩一のそれより熱く、妻の空白を埋めてくれる体。背徳の甘さが、胸を締めつける。夫のデスクの上で、この男に跨がる自分を思うだけで、下腹部に疼きが集まる。妻の仮面が、ゆっくり剥がれ落ちる。

 拓也の手が、動いた。美咲の腰に、軽く触れる。意図的な熱。彼女の視線が絡みつき、瞳の奥で合図を送る。もっと、近づけ。痴女の本能が、抑えきれず指を強める。肩を揉むように、爪を立てて。拓也の息が、荒くなる。互いの熱が、狭い部屋を蒸すように濃密になる。

「こんなところで……浩一が知ったら」

 拓也の言葉は、甘い抗議。だが、手は離れない。美咲は微笑む。唇が湿り、声を出さず視線で答える。この秘密は、二人だけのもの。夫への寝取りの興奮が、彼女の芯を熱く溶かす。内なる淫乱が、静かに爆ぜる。指が、首筋から耳朶へ。息を吹きかけるように近づき、吐息を重ねる。

 沈黙が、重く降りる。デスクの上で、二人の手が絡み合う。美咲の指が、拓也のシャツのボタンに触れる。一つ、外す素振り。肌が覗き、胸毛の感触が指先に伝わる。彼女の胸が、上下に激しくなる。ブラの締めつけが、乳首を硬くさせる。視線の奥で、互いの欲望が語り合う。抑えられた息が、部屋を熱く染める。

 浩一の写真が、デスクの隅に置かれている。それを見るたび、背徳の甘酸っぱさが倍増する。夫の親友を誘う妻。このスリルが、疼きを頂点へ押し上げる。美咲の心が、深く沈む。日常の自分はどこへ。女としての渇望が、拓也の体温に溶けていく。合意の糸が、静かに紡がれ始める。

 拓也の唇が、近づく。だが、美咲は指で制す。まだ、今ではない。視線で、次を約束する。肩に這わせた手が、ゆっくり離れる。余韻が、肌に残る。熱い痕跡。雨音が、二人の鼓動を掻き消すように激しくなる。

「また、来て……拓也さん」

 美咲の声は、初めて震えた。痴女めいた誘いが、言葉に滲む。拓也は頷き、立ち上がる。鍵を開け、リビングを通り、玄関へ。ドアを閉める音が、静かに響く。

 美咲は書斎に残り、デスクに寄りかかる。肩の感触が、掌に焼きつく。拓也の吐息が、耳に残る。夫の帰りを待つ夜が、甘い予感で満ちる。内なる衝動が、次なる一線を切望する。唇を重ねる瞬間が、すぐそこに迫っていた。

(約1980字)