緋雨

壁越しのレースの疼き(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:夜ごとのレースの影

翌朝の廊下で、視線が再び絡んだ。拓也が部屋を出ると、遥がちょうどドアを開けていた。黒いコートの下から、昨夜のレースの記憶がよぎる。彼女の瞳が、静かにこちらを捉える。一瞬の沈黙、わずかな頷き。言葉はない。ただ、空気が前夜より重く、熱を帯びていた。エレベーターの中で、互いの肩が触れぬ距離を保ちながら、息の音が聞こえるようだった。拓也の胸に、疼きが残る。彼女は知っているのか。あの隙間を、視線を。

その夜、再び十一時を過ぎた頃。部屋の灯りを落とし、拓也は壁際に寄った。心臓の鼓動が、壁を伝うように響く。隙間から漏れる灯りが、柔らかく揺れている。覗き込む。遥の姿が、そこにあった。白いレースのランジェリーが、シャワー上がりの肌に湿り気を纏い、薄く張りついている。二十八歳の体躯は、成熟した柔らかさを湛え、腰からヒップへの曲線がレースの網目を優しく引き伸ばす。彼女はベッドの端に腰掛け、ゆっくりと脚を組み替えた。レースの縁が、太腿の内側を淡く撫で、微かな皺を生む。

スマートフォンを構え、シャッターを切る。息を殺し、彼女の動きを追う。一枚の写真に、胸の谷間がレース越しに透け、淡い影を落とす。彼女の指先が、ブラのストラップをなぞり、肩から滑らせる仕草。肌が露わになり、レースがわずかにずれる。拓也の視線が、熱く絡みつく。下腹部に甘い疼きが広がり、抑えきれぬ衝動が指先を震わせる。壁越しの距離が、息づかい一つで縮まる。

遥の吐息が、かすかに聞こえた。壁が薄いせいか。シャワーの余韻か、それとも別の熱か。彼女はベッドに横たわり、目を閉じた。レースの生地が、息の上下に合わせて微かに波打ち、肌の温もりを透かす。拓也の体が、疼きに反応する。毎夜、この儀式が始まった。仕事の疲れを忘れ、隙間に視線を注ぐ。翌夜も、その翌夜も。レースの違う色が現れる日もあった。淡いピンクのレースが、ヒップを包み、布ずれの音が壁越しに響く。黒いレースが、夜の闇に溶け、胸の膨らみを強調する夜も。

三日目の夜、遥の動きが変わった。鏡の前に立ち、体を捻りながら、こちらを意識したようにゆっくりと回る。レースの網目が、背中の窪みを透かし、脊椎のラインを浮かび上がらせる。拓也の息が、熱く乱れる。彼女の指が、レースの縁を優しく引き、肌に食い込ませる。甘い疼きが、拓也の全身を這う。写真を切り続ける手が、わずかに震え、フレームに彼女の姿を閉じ込めようとする。壁越しに、互いの存在が静かに近づく。遥の息が、深く長くなり、部屋の空気を震わせる。

四日目の夕暮れ、廊下で再び視線が交錯した。遥の瞳に、微かな揺らぎがあった。頰がわずかに上気し、唇が乾いているように見える。拓也の胸が締めつけられる。あの隙間を知っているのか。毎夜の視線を。言葉を交わさず、階段を下りる足音が、重く響く。夜が来るのを、互いに待っている気がした。

その夜、隙間から覗くと、遥は窓辺に立っていた。カーテンを少し開け、街灯の光を浴び、レースのランジェリーが淡く輝く。湿った肌に張りつき、胸の先端が微かに浮き出る。彼女の視線が、外の闇を貫くように、こちらの部屋へ向く。拓也の心臓が激しく鳴る。窓ガラス越しに、瞳が絡みつく。無言の緊張が、空気を震わせる。彼女は動かない。ただ、静かにこちらを見つめ、レースの布を指先でなぞる。息が混じり合うような距離。知っている。毎夜の視線を、盗む熱を。

拓也の体が、甘く疼く。抑えきれぬ衝動が、下腹部を熱く溶かす。レースの影が、窓辺で揺れ、互いの存在を誘う。彼女の唇が、わずかに開き、吐息がガラスに曇りを生む。次の一線が、静かに迫る。壁を越え、視線が触れ合うその時、何が起こるのか。

(2012文字)