芦屋恒一

上司の視線、部下の疼き(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:デスクの膝、囁きの熱

翌日のオフィスは、平日の午後遅くというのに、いつもより静かだった。窓辺に夕暮れの影が長く伸び、街灯の灯りがぼんやりと点き始めている。周囲のデスクは空席ばかりで、残っているのは俺と美佐子さんだけ。昨夜の残業の余韻が、まだ体に残っていた。レポートの修正を終え、彼女のデスクに持って行ったのは、午後七時過ぎ。雨は止んでいたが、空気は湿気を帯び、室内に重く淀んでいる。

「これ、昨夜の分です。確認お願いします」

俺は美佐子さんのデスクにファイルを置き、声を低く抑えた。彼女は眼鏡をかけ直し、書類に目を落とす。黒いブラウスに膝丈のスカート、昨夜と同じく細身のシルエットが、蛍光灯の下で柔らかく浮かび上がる。42歳の体躯は、抑制された曲線を描き、俺の視線を自然に引きつける。

「ふうん……直ったわね。よくできました、佐藤君」

彼女の声は穏やかだが、昨夜の響きを宿している。ファイルを閉じ、デスクの引き出しにしまうと、椅子を少し回して俺の方を向いた。膝がデスクの下から覗き、ストッキングの光沢が微かに揺れる。俺は立ち尽くし、返事を待つ。心臓が、昨夜の鼓動を思い起こさせるように速くなる。

「座りなさい。まだ話があるわ」

美佐子さんは自分のデスクの端を叩き、俺を促す。狭いスペースだ。俺は躊躇なく腰を下ろし、彼女の膝が俺の腿に触れそうな距離になる。オフィスの空調音だけが響く中、互いの息が聞こえそうな近さ。彼女の瞳が、眼鏡越しに俺を捉える。鋭いが、昨夜より甘い。

「昨夜の君のミス……直したのはいいけど、原因はわかっている?」

言葉責めが、再び始まる。低く、耳に絡みつく調子。俺は喉を鳴らし、視線を落とした。

「集中が……切れてました。すみません」

「集中が切れる、ねえ。28歳の若い男が、42歳の上司の隣で、そんなに動揺するなんて。私の視線が、君を乱すの?」

彼女の唇が、微かに湿る。言葉の端に息が混じり、俺の耳朶をくすぐる。昨夜の肩への触れ方が、脳裏に蘇る。肌が熱くなり、下腹部に甘い疼きがよぎる。俺は膝を固く閉じ、彼女の視線から逃れようとするが、無駄だ。美佐子さんは椅子をさらに近づけ、膝が俺の腿に軽く触れる。布地越しに伝わる温もり。42歳の女の柔らかさ。

「課長……ここ、オフィスですよ」

俺の声は震えていた。抗議のつもりだが、興奮を隠せない。彼女は小さく笑い、指先を俺の膝に置く。抑制された触れ方。ただ置くだけ。爪を立てず、圧力をかけず。それなのに、電流のように体を駆け巡る。

「オフィスだから、どうしたの? 二人きりよ。残業の続き……昨夜の続きね。君の目、昨夜と同じ。熱っぽく私を追うの。熟れた女の体を、こんなに欲しがるなんて。28歳の君に、42歳の私が疼かされるなんて……困るわ」

囁きが、深くなる。言葉が俺の心を抉り、欲求を静かに煽る。「疼かされる」。その響きが、俺の体を熱くする。美佐子さんの手が、膝から少し上へ滑る。スカートの裾が僅かにずれ、柔らかな感触が指先に伝わる。俺の腿が、熱く反応する。息が荒くなり、視線が絡みつく。

「美佐子さん……そんなこと、言わないで」

俺は呟くが、声に力がない。むしろ、彼女の言葉を求めている。彼女の瞳が細まり、眼鏡を外す。素顔が露わに。潤んだ唇、年齢を重ねた深みのある表情。42歳の色気が、静かに俺を包む。

「言わないで、なんて嘘よ。君の体、こんなに熱い。私の手、感じてるわね。昨夜の肩から、今日は膝へ……次はどこかしら? 君の欲求、私の言葉でどんどん膨らむのね。抑制できない、若い熱」

手が、俺の内腿に近づく。止まる。触れそうで触れない。距離のわずかな揺らぎが、狂おしい。オフィスの静寂が、熱を帯びる。窓の外、街灯が点き、夜の気配が濃くなる。俺は耐えきれず、彼女の腕に手を伸ばす。合意の確認のように、軽く握る。彼女の肌は柔らかく、温かい。

「佐藤君……いいのよ。触れて」

美佐子さんの声が、甘く溶ける。俺の手を導き、自分の膝に置かせる。ストッキングの滑らかな感触。42歳の腿の張り。俺の指が、微かに震える。彼女の視線が、俺の唇を捉える。合意の視線が交錯する。重く、熱く。

「君の指……熱いわ。28歳の男の触れ方、私を溶かすのね。でも、まだ……」

唇が近づく。息が混じる。オフィスの空気が、甘く淀む。俺は身を寄せ、彼女の首筋に顔を埋めそうになる。香水の匂い、肌の甘さ。ついに、唇が触れる。柔らかく、湿った感触。キスは浅く、しかし深く絡みつく。舌が軽く入り、互いの熱を確かめ合う。42歳の唇の熟れ、28歳の俺の渇望。言葉責めが、キスに変わる瞬間。

彼女の舌が、俺の口内を優しく責める。甘い唾液の味。手が俺の背中に回り、引き寄せる。体温が混じり、胸が触れ合う。ブラウス越しに、柔らかな膨らみの感触。俺の下腹部が、硬く疼く。キスが深まる中、彼女の囁きが唇の隙間から漏れる。

「ん……君のキス、若いのに……こんなに上手いなんて。私を、もっと疼かせて」

言葉が、再び欲求を煽る。俺は彼女の腰を抱き、強く吸う。オフィスの椅子がきしみ、静寂を破る。だが、美佐子さんは突然、体を引く。唇が離れ、息が荒い。瞳が、妖しく輝く。

「まだよ……佐藤君。ここはオフィス。続きは、もっとふさわしい場所で」

彼女の指が、俺の唇をなぞる。「まだよ」の一言が、次を焦がす。膝に置かれた手が離れ、眼鏡をかけ直す。抑制の美学が、再び訪れる。体は熱く疼いたまま、デスクの書類に視線を戻す彼女。俺は立ち上がり、腿の余熱を感じながら席に戻る。オフィスの夜は、深まるばかり。この疼きは、いつまで続くのか。

(第2話 終わり 第3話へ続く)