三条由真

妊婦CAの赤ちゃん甘え逆転(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:制服妊身の視線圧

 夜のフライトは、いつも通り静かだった。窓外に広がる闇は、街の灯りを遠くに飲み込み、機内をより深く閉ざす。ビジネスクラスのシートに身を沈め、僕はグラスを傾けた。三十五歳のこの体は、ニューハーフとして長年鍛え上げた均衡を保ち、力関係の微かな揺らぎに敏感だ。仕事の出張帰り、ただの移動のはずが、今日の空気は少し違う。

 CAの遥が現れたのは、離陸後のドリンクサービスだった。二十八歳、妊娠七ヶ月の彼女は、制服のスカートがわずかに張り、シャツのボタンが妊身の曲線に優しく押し上げられる。黒髪を後ろでまとめ、微笑みを浮かべながら通路を進む姿は、機内の薄明かりに溶け込みながらも、異様な存在感を放っていた。彼女の視線が、僕のシートに止まる。

「何かお飲み物はいかがですか?」

 声は柔らかく、しかし息づかいがわずかに重い。腹部の重みを支える歩みは、ゆっくりと、だが確実に近づく。僕はグラスを置き、彼女の目を見返した。そこに、ただのサービス以上の何かが潜む。主導権の探り合いが、すでに始まっていた。

 彼女はトレイを傾け、ワインを注ぐ。指先がグラスの縁に触れる瞬間、僕の視線は自然に彼女の腹部へ落ちる。制服の布地が、柔らかな膨らみを包み、息ごとに微かに揺れる。妊娠七ヶ月──それは、成熟した女性の体が新たな命を宿す、究極の均衡点だ。彼女も気づいている。僕の視線を、感じ取っている。

「特別なフライトになりそうですね。お客様」

 言葉の端に、息が混じる。サービスのはずの動作が、まるで境界を試すように近い。トレイを下げ、彼女の腰が僕のシートアームに触れそうになる距離。僕は微笑みを返し、沈黙を挟む。視線が絡み、互いの瞳に映るのは、相手の微かな揺らぎ。彼女の唇がわずかに湿り、息が熱を帯びる。

 機内は静寂に包まれ、他の乗客はそれぞれの闇に沈んでいる。平日夜の便、仕事帰りの大人たちだけが、酒と疲労を携えて座る空間。足音も、会話も最小限。そこに、僕と彼女の空気だけが、張り詰める。

 次に彼女が来たのは、食事の時間。トレイを置く手が、僕の膝元をかすめる。意図的か、無意識か。腹部の重みで前屈みになる姿は、制服の隙間から肌の白さを覗かせ、甘い圧力を生む。僕はフォークを止め、彼女の顔を上げる。

「重そうですね。お体、大丈夫ですか?」

 言葉は穏やかだが、視線に力を込める。彼女の目が、一瞬細まる。主導権の綱引き──僕の言葉が彼女の境界を押せば、彼女の息づかいがそれを押し返す。

「ありがとうございます。お客様の心配りが、心強いですわ」

 返事は微笑みと共に、しかし瞳の奥に鋭い光。腹部を軽く撫でる仕草が、僕の視線を誘う。サービスを終え、彼女が去る背中を追う。スカートのラインが、歩みのリズムで揺れ、機内の空気を震わせる。僕の肌が、熱を持つ。

 その後も、彼女の巡回は続く。毛布を差し出す時、水を注ぐ時、毎回視線が絡み、沈黙の圧が積み重なる。彼女の息が、僕の耳元近くで聞こえる距離。腹部の曲線が、制服越しに存在を主張する。僕は言葉を控え、ただ目で応じる。どちらが先に折れるか──その均衡が、甘い疼きを呼び起こす。

 機内アナウンスが、着陸を告げる。シートベルトのサインが点灯し、彼女が最後のチェックに回る。僕のシートに立ち止まり、ベルトを確認する手が、わずかに震える。いや、意図的なのか。

「快適にお過ごしいただき、ありがとうございました。またのご利用を、心よりお待ちしております」

 囁くような声。顔が近い。妊身の温もりが、シート越しに伝わる。僕は頷き、視線を外さない。

「確実に、乗りますよ」

 彼女の唇が、弧を描く。着陸の振動が機体を揺らす中、彼女が身を寄せ、耳元で囁く。

「また乗って……くださいね。お客様」

 息が、首筋にかかる。主導権の揺らぎが、一瞬空気を凍らせる。次の瞬間、彼女の目が溶け、甘い震えを残して去る。タラップを降りる僕の背に、その視線が刺さる。ホテルへの道中、肌の熱が引かない。この出会いが、ただのフライトで終わらない予感が、胸を締めつける。

(第1話 終わり 次話へ続く)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━