緋雨

夫の前で熟れる妻の視線檻(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:杯の指先と首筋を刺す視線

 平日の夕暮れ、再び雨が窓を叩いていた。街灯の光がリビングを淡く照らし、部屋に静かな湿り気を湛えていた。美佐子はキッチンで紅茶の準備をしていた。42歳の指先でポットを傾け、湯気を細やかに立ち上らせた。夫の健一(48歳)はソファに腰を沈め、新聞を広げている。いつもの風景。だが、心の奥に残る前回の余韻が、肌を微かに敏感にさせていた。

 インターホンが鳴った。健一の声が玄関に響く。「浩太か。またかよ、入ってくれ」。

 浩太。35歳の男。再びの訪問。美佐子はトレイにカップを乗せ、静かに息を整える。玄関のドアが開く音。浩太の足音が、廊下を低く踏みしめる。コートを脱ぐ気配。リビングに入る彼の姿を、美佐子はキッチンから見やる。雨に濡れた肩。鋭い眼差しが、一瞬部屋を掃くように彼女を捉える。

「こんばんは、美佐子さん。お邪魔します」。

 低く抑えた声。美佐子は頷き、トレイを手に夫の隣へ近づく。健一がビールを置き、「浩太、座れよ。美佐子、紅茶出せ」と促す。浩太はソファの端に腰を下ろし、健一と隣り合う。美佐子はテーブルの前に立ち、カップを順に注ぐ。湯気が立ち上り、部屋に甘い香りが広がる。

 まず健一のカップ。次に浩太の。カップを差し出す瞬間、浩太の指が美佐子の指先に触れた。僅か。受け取りの動作で、自然に重なる一瞬の接触。だが、その熱は指の腹から肌の奥へ、鋭く染み入る。浩太の指は太く、力強い。美佐子の指が、微かに震えて離れる。視線を上げると、浩太の視線が首筋を刺すように注がれていた。

 黒い瞳。底知れぬ深さで、首のラインをゆっくりと這う。白い肌が、部屋の灯りに照らされ、薄い汗を浮かべ始める。美佐子は息を潜め、カップをテーブルに置く。頰が、じわりと熱を帯びる。夫のすぐ隣で、この視線。この指の感触。羞恥が、胸の奥からゆっくりと広がる。

 健一は新聞を畳み、ビールを煽る。「浩太、今日の会議、どうだった? あの資料、よかったよな」。

 浩太は頷き、紅茶に口をつける。「ええ、健一さんの指示通りです」。声は平静。だが視線は離れない。美佐子の首筋から、鎖骨へ。ワンピースの襟元を滑るように。彼女は夫の隣の椅子に腰を下ろす。膝を揃え、裾を直す。だが、空気が重い。夫の無関心が、かえって緊張を濃くする。健一の笑い声が響く中、浩太の目だけが、美佐子を静かに支配する。

 紅茶の香りが部屋に満ちる。浩太のカップがテーブルに置かれる音。微かな響きが、美佐子の耳に刺さる。彼の指が、再びカップを握る仕草。さっきの接触を思い起こさせる。美佐子の息が、浅く震え始める。胸が上下し、布地に頂が擦れる感触。首筋が熱く、視線に晒されて疼く。

 話は仕事の続きへ。健一が身を乗り出し、「次は浩太に任せたい案件があるんだ」と語る。浩太の視線は、隙を狙うように美佐子の脚へ落ちる。椅子に座った姿勢で、膝の隙間。細く熟れた曲線が、僅かに露わ。浩太の目が、ゆっくりと這う。指先の記憶が、そこに重なるように。美佐子は膝を閉じ、指で裾を押さえる。だが、遅い。視線はすでに、内腿の奥まで熱を注ぎ込む。

 頰が染まる。紅潮した肌が、鏡のように自分を映す。夫の隣で、浩太の視線に体が反応する羞恥。息が熱く、浅くなる。内面で、抑えきれぬ疼きが湧く。なぜこんなに、肌が敏感なのか。前回の視線が、今日のこの接触を呼び寄せたのか。言葉はない。ただ、沈黙の空気が張り詰め、部屋を重くする。

 健一が立ち上がり、キッチンへ。「もう一本ビール取ってくるよ。浩太、何か食うか?」。

 二人きりの瞬間。浩太の視線が、より濃密に首筋を刺す。指先の感触が、脳裏に蘇る。美佐子の手が、無意識に自分の首に触れる。熱い肌。薄い汗。浩太の瞳が、それを捉え、舐め回すように。彼女の息が、僅かに漏れる。胸の奥が、甘く疼く。夫の足音が近づき、浩太は視線を逸らす。健一がビールを置き、話が再開する。

 時間がゆっくりと過ぎる。雨音が強まり、窓に水滴が流れ落ちる。浩太の視線は、執拗に美佐子を追い、指の接触の記憶を重ねる。夫の笑い声が被さる中、彼女の体は熱く反応し続ける。首筋が火照り、脚の内側が湿り気を帯びる。羞恥が、甘い震えに変わる。抑えきれぬ疼きが、下腹部へ広がり始める。

 夜が訪れる。浩太が帰る頃、玄関でコートを羽織る。「お邪魔しました、美佐子さん。紅茶、美味しかったです。また来ます」。

 その言葉に、視線が絡みつく。指先の熱が、最後に残る。美佐子は頷くのみ。ドアが閉まり、静寂が戻る。健一はソファに残り、「浩太、最近調子いいな」と呟く。風呂の後、夫婦は布団に潜る。健一の寝息が規則正しく響く中、美佐子は一人、バスルームへ向かう。

 鏡の前に立つ。照明の下、紅潮した頰。首筋に浮かぶ薄い汗の跡。ワンピースを脱ぎ、素肌を晒す。42歳の体。柔らかく熟れた曲線が、鏡に映る。指先を、ゆっくりと首筋に這わせる。浩太の指の感触を、なぞるように。熱い視線を思い浮かべ、肌が震える。胸の頂が硬くなり、息が浅く乱れる。

 指が鎖骨を滑り、胸元へ。夫の隣で晒された羞恥が、甘く疼く。内腿へ手を伸ばす。湿り気を帯びた感触。抑えきれぬ熱が、鏡に映る己の姿をさらに紅潮させる。息が熱く、唇が微かに開く。下腹部の疼きが、募る。浩太の視線と指が、体を蝕む。

 この接触は、次に何をもたらすのか。三度目の訪問で、空気はどう変わるのか。鏡の中の自分が、静かに問いかける。余韻の熱が、夜の静寂に溶け、甘い疼きだけを残す。

(2014文字)