久我涼一冬特集

雪の湯宿で溶ける妻と友の脚(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:雪囲みの湯、素肌の揺らめきと秘密

翌朝、窓を開けると世界は白く固まっていた。昨夜の嵐が山々を覆い尽くし、旅館の周囲は膝まで積もった雪に沈黙を強いられている。女将の言葉通り、道路は完全に閉ざされ、外出など夢のまた夢。拓也は布団の中で目を覚まし、隣の彩の寝息を聞く。真由は隣の隣で静かに眠っていた。三人で一部屋に布団を並べたのは、昨夜の寒さのせいだ。体温が混じり合い、微かな甘さが残る。

朝食は簡素なものだった。囲炉裏端で温めた味噌汁と漬物。女将が雪の状況を告げる。「今日は一日中、ここでお過ごしください。貸切の露天風呂がおすすめですよ。お湯が熱くて、雪見が格別です」──その言葉に、彩が目を輝かせる。「三人で入ってみない? 雪囲み風呂なんて、滅多にないわ」真由が頷き、拓也も異を唱えなかった。孤立した雪の檻の中で、拒む理由などない。

浴衣を脱ぎ、素肌にタオルを巻いて露天風呂へ向かう。雪の壁が周囲を囲み、空は鉛色に低く垂れ込めている。石畳の道は凍てつき、足元が滑る。湯船は岩に囲まれ、熱い湯気が立ち上り、白い雪と溶け合う。彩が最初に足を入れ、溜息を漏らす。「あぁ、熱い……極楽」真由が続き、拓也は後ろから湯に沈む。三人、肩を寄せ合うように座った。湯煙が視界をぼかし、雪の粒子が舞い落ちては湯に消える。

ストッキングを脱いだ二人の素肌が、湯の中で露わになる。彩の脚は細く、湯に濡れてしっとりと光る。膝から太ももへのラインが、湯の揺らめきで柔らかく揺れる。真由のそれは豊かで、ふくらはぎの筋が微かに浮き、湯気が肌を撫でるように立ち上る。拓也の視線が、自然とそこに落ちた。昨夜のこたつ下のざわめきが、鮮やかによみがえる。湯の熱が体を溶かし、素肌の温もりが間近で感じられる。彩の足が無意識に拓也のすねに触れ、真由の膝が彩のそれを掠める。誰も言葉を発さず、ただ湯音と雪の静けさだけが響く。

「気持ちいいわね……雪がこんなに近くて」彩が囁き、目を細める。真由が笑って応じる。「大学時代、二人で雪山に行ったことを思い出すわ。あの時も、凍えそうになって体を寄せ合ったっけ」──その言葉が、湯煙の中で微かな波紋を広げる。拓也の胸に、かすかな棘が刺さる。大学時代。二人はそこで出会い、長い友情を築いた。血のつながりはないが、拓也より先に互いを深く知る時間があった。嫉妬ではない、もっと複雑な疼き。妻の過去に、友人の影が重なる。

湯から上がり、部屋に戻ると女将が酒と肴を運んでくる。「雪見酒にどうぞ。客がいない分、ゆっくり」──地酒の瓶が再び並ぶ。三人は浴衣姿でこたつに潜り込み、グラスを合わせる。湯上がりの体は火照り、酒が一層体を巡る。話題は自然と大学時代へ。彩が頰を赤らめ、真由に尋ねる。「あの時の秘密、まだ覚えてる? 二人で男の話して、夜通し笑った夜」真由が目を伏せ、くすりと笑う。「もちろん。彩が『結婚したら絶対に後悔しない男』って言ってたのに、今じゃこんなに穏やか。拓也さん、よかったわね」

拓也はグラスを傾け、静かに聞く。秘密話は軽いものだったが、二人の視線が絡むたび、胸のざわめきが増す。彩が真由の肩に寄りかかり、「あの頃は自由だったわね。今は……でも、こうして三人でいるのも、悪くない」真由の指が彩の浴衣の裾を直す仕草。素肌の名残が、布地の下に熱く残る。拓也の視線が、二人の脚に落ちる。浴衣から覗く素足が、湯の湿り気を帯びて艶めかしい。ストッキングの記憶が、素肌の柔らかさと重なり、興奮が静かに膨らむ。

酒が進むにつれ、空気が濃くなる。彩の目が潤み、真由の頰が上気する。拓也の膝がこたつの下で、二人の足に触れそうになる。誰も避けない。雪の音が窓を叩き、外の世界を遠ざける。「もう少し、こうしていたいわ」彩の言葉に、真由が頷く。視線が三つ、絡み合う。微かな嫉妬が、甘い興奮に変わる瞬間。距離は、雪のように静かに溶け始めていた。

雪はまだ降り止まず、夜が迫る。三人の体温が、部屋をゆっくりと満たしていく。

(つづく)