如月澪

四手の深みに沈む疼き(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:残業後の揺らぐ視線

 平日の夜のオフィスは、いつもより静かだった。窓の外に広がる街灯の光が、ガラスに淡く反射している。美咲はデスクで最後の資料をまとめ、ため息をついた。28歳の独身OLとして、このプロジェクトに携わって半年。今日も残業が長引いた。

 チームの先輩は四人。田中先輩は30歳、ラフなシャツ姿がどこか男らしい。鈴木先輩は28歳、細身で穏やかな笑顔が印象的。高橋先輩は31歳、がっしりした体躯に落ち着いた物腰。山田先輩は29歳、軽妙なトークで場を和ませる。皆、仕事熱心で、美咲にとっては頼れる存在だった。血のつながりなどない、ただの同僚。でも、最近、残業の合間に交わす視線に、日常の隙間が少しずつ熱を帯びてきていた。

 「よし、今日も一段落。美咲さん、飲みに行こうぜ。近くのラウンジで軽く一杯」

 田中先輩の声に、皆が頷く。美咲は少し迷ったが、断る理由もない。残業後の平日の夜、街は大人の足音だけが響く。オフィス街の路地を抜け、薄暗いラウンジに入った。カウンター席に五人で並び、グラスが触れ合う音が心地よい。

 ウィスキーのロックを傾けながら、仕事の話からプライベートへ。鈴木先輩が美咲の肩に軽く触れ、「美咲さん、最近疲れてる顔してるよ。もっとリラックスしたら?」と笑う。高橋先輩がグラスを回し、「そうだな。俺たちで何かしてあげたいよ」と冗談めかして言う。山田先輩の視線が、グラスの縁越しに美咲の唇を捉える。

 空気が少しずつ変わっていく。美咲の頰が、酒のせいか熱い。田中先輩の視線が、ストレートに絡みつく。普段はデスク越しにしか感じないその眼差しが、今は近くて濃い。カウンターの影で、田中先輩の手が自然に美咲の腰に触れた。軽く、指先が布地の上から撫でるように。

 「ん……」

 美咲の息が、わずかに熱を帯びる。触れられた腰の辺りが、じんわりと疼きを呼び起こす。皆の視線が、そこに集まる。鈴木先輩の瞳が優しく細まり、高橋先輩の指がテーブルの下で美咲の膝に近づく気配。山田先輩が低く囁く。「美咲さん、こんな夜に五人でいるの、なんか特別だよな」

 心臓の鼓動が速まる。日常の延長線上なのに、甘い違和感が肌を這う。田中先輩の手が腰から離れず、親指が軽く円を描く。美咲は抵抗など考えない。むしろ、その温もりが心地よい。皆の眼差しは熱く、しかし穏やかで、拒絶など微塵もない。互いの合意が、空気のように自然に満ちている。

 グラスが空になり、二杯目、三杯目。話題はさらに親密に。美咲の最近の休日の過ごし方、皆の独身生活の愚痴。笑いが弾け、肩が触れ合う距離。田中先輩の視線が、再び美咲を捉え、手が腰を優しく引き寄せる。息が混じり合う近さで、「美咲さん、今日はこのまま解散したくないな」と囁く。

 皆が頷くように視線が集まる。鈴木先輩が「美咲さんのマンション、近いんだろ? もう少し飲もうよ」と提案。高橋先輩が「俺も付き合う」と笑い、山田先輩が「いい夜になりそうだ」とウィンクする。美咲の胸に、甘い疼きが芽生える。日常の隙間から、静かに溢れ出す熱。拒む理由などない。むしろ、期待が息を熱くする。

 ラウンジを出て、夜風が頰を撫でる。街灯の下、五人の足音が揃う。美咲のマンションまでは、路地を抜けてすぐ。皆の体温が近く、視線が絡みつく。家路を共に歩きながら、美咲は思う。この先、何が待っているのか。腰に残る田中先輩の感触が、さらなる深みを予感させる。

 マンションのドアが開く音が、静かな夜に響いた。

(約1950字)