篠原美琴

血の繋がらぬ義姉の疼く残香(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:洗濯物の甘い誘惑、耳元の言葉責め

 雨は夜通し降り続き、朝の空気を重く湿らせていた。平日の朝、俺はベッドから起き上がり、リビングへ向かう。遥さんの気配が、すでに家に満ちていた。シャンプーの残香が、薄く漂う。昨夜の食卓の余韻が、肌に残る。心臓の鼓動が、静かに速くなる。

 母親たちは早朝から仕事に出かけ、今日も家は俺と遥さんだけ。キッチンカウンターに、コーヒーの香りが残る。遥さんは出かける支度を済ませ、玄関で靴を履いていた。黒のコートに包まれ、髪が肩に落ちる。振り返り、微笑む。

 「拓也くん、今日もよろしくね」

 低く、穏やかな声。視線が、わずかに絡む。俺は頷き、言葉を飲み込んだ。彼女の香りが、尾を引いて去る。ドアの閉まる音が、静寂を残す。

 午後、洗濯機の音が止まった。リビングの隅に、バスケットが置かれている。山積みの洗濯物。タオル、ブラウス、スカート。遥さんのものだ。無意識に近づく。湿った布地から、立ち上る香り。シャンプーの花のような甘さの下に、肌の温もり。汗の微かな塩気と、女の柔らかな体臭が混じり、鼻腔をくすぐる。昨夜の食卓で感じた、あの残香と同じ。いや、より濃く、鮮やかだ。

 指が、ブラウスに触れそうになる。止める。だが、息が深くなる。香りが、肺に染み込む。首筋が、熱を持つ。俺の視界が、ぼやける。布地の皺に、彼女の体温が宿っている気がした。指先が、わずかに震える。

 「拓也くん、何してるの」

 遥さんの声が、背後から落ちる。俺は凍りつく。振り返れない。心臓が、激しく鳴る。彼女の足音が、近づく。静かで、確かな。洗濯物の山が、俺と彼女の間に立つ。

 息が、耳元に触れる。遥さんが、すぐそばにいる。肩が触れぬ距離。だが、空気が重い。彼女の体温が、伝わる。香りが、強くなる。俺の鼻を、執拗に撫でる。

 「私の匂い、嗅ぎたいの?」

 低く、囁く声。微笑みの気配。言葉が、耳朶を震わせる。俺の頰が、熱く染まる。視線を逸らす。床に落とす。だが、逃げられない。彼女の息が、首筋に当たる。温かく、湿った。

 「恥ずかしい子ね。そんなに、夢中になって」

 言葉が、続く。低く、甘く、責めるように。俺の喉が、鳴る。息が、途切れる。羞恥が、胸の奥から湧き上がる。全身を、甘く痺れさせる。肌が、熱く疼く。指先が、洗濯物の端を掴みそうになる。だが、動かせない。彼女の視線が、背中を刺す。

 沈黙が、落ちる。雨音が、遠く響く。遥さんの息遣いが、近くて、息苦しい。香りが、俺を包む。シャンプーと体臭の混ざり合いが、頭の中を満たす。昨夜の食卓の視線が、蘇る。彼女の唇の動きが、脳裏に浮かぶ。

 「ふふ、顔、真っ赤よ。私の香り、そんなに好き?」

 再び、言葉責め。耳元で、息が絡む。俺の耳が、熱くなる。首の後ろが、じわりと汗ばむ。羞恥が、甘い痺れに変わる。全身の毛穴が、開くような感覚。触れていないのに、肌が震える。心臓の音が、部屋に響きそう。

 俺は、ようやく視線を上げる。遥さんの目が、俺を捉える。穏やかだが、奥に揺らぎ。微笑みが、深くなる。彼女の唇が、わずかに湿る。言葉を待つように。

 「ご、ごめん……」

 声が、掠れる。遥さんは、首を傾げる。香りが、動きに合わせて流れる。

 「謝らないで。嬉しいわよ、拓也くんがそんな目で、私のものを……」

 言葉が、途切れる。沈黙。視線が、絡まる。俺の息が、乱れる。彼女の瞳が、俺の唇を掠める。空気が、甘く重い。洗濯物の山が、二人を隔て、繋ぐ。

 遥さんが、ゆっくり離れる。香りが、尾を引く。彼女はバスケットに手を伸ばし、ブラウスを畳み始める。指先の動きが、優雅。俺は動けない。視線が、彼女の手に落ちる。そこに、残香が宿る。

 「後で、ちゃんと畳んでおいてね。私の匂い、独り占めしちゃだめよ」

 背を向け、囁く。微笑みの声。俺の胸が、締めつけられる。羞恥の余韻が、肌を熱くする。彼女はリビングを出る。足音が、遠ざかる。

 夕暮れが、窓から忍び寄る。雨が、細かく降り続く。俺は洗濯物の前に座り込む。香りが、立ち上る。指が、ようやく布地に触れる。柔らかく、温もりを感じる。息が、深くなる。遥さんの言葉が、耳に残る。「恥ずかしい子ね」。全身が、再び痺れる。

 夜になる。夕食は、簡単なもの。遥さんが作った。食卓の空気が、昨夜より重い。視線が、交錯する。彼女の微笑みが、深く。箸の音が、沈黙を刻む。香りが、テーブルを漂う。

 食事が終わり、遥さんが皿を運ぶ。俺は席に残る。廊下の灯りが、薄暗い。彼女の背中が、消える。静寂が、家を覆う。

 夜の廊下を、歩く。俺の部屋へ向かう。ふと、空気が変わる。遥さんの部屋のドアが、わずかに開いている。隙間から、香りが忍び寄る。シャンプーと体臭の、濃い残香。息が、止まる。ドアの向こうで、彼女の気配。静かな息遣い。

 俺の足が、止まる。視線が、隙間に落ちる。香りが、肌を撫でる。心臓が、激しく鳴る。廊下の空気が、甘く絡みつく。彼女の存在が、すぐそこに。

 雨音が、続きを誘う。

(2014文字)