この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。
## 第1話:同居の夜、漂う柔らかな残香
雨の音が、窓ガラスを叩く。平日の夕暮れ、街灯の淡い光がカーテンの隙間から差し込み、リビングの空気を薄く染めていた。俺、佐藤拓也、25歳。今日からこの家で暮らすことになった。母親の再婚相手の連れ子が、義姉の遥さん、32歳。血の繋がりは一切ない。ただの、突然の同居人。
引っ越しの荷物を片付けた後、キッチンから漂う香りに気づいた。湯気の向こうで、遥さんが夕食の支度をしている。白いブラウスに黒のスカート、動きに合わせて髪が揺れる。シャンプーの残り香か、それとも肌から滲む柔らかな体臭か。甘く、かすかに湿った匂いが、空気に溶け込んでいた。俺はソファに腰を下ろし、無意識に鼻を動かした。
「拓也くん、もうすぐよ」
遥さんの声が、低く響く。振り返らずに、淡々と。俺は視線を落とした。心臓の鼓動が、わずかに速くなる。彼女の存在が、この家に新しい重みを加えていた。母親は再婚相手と二人で、遅くまで仕事だ。今日から、俺と遥さんだけだ。
食卓に着く。テーブルクロスが、静かに皺を寄せる。遥さんが皿を運んでくる。鶏の煮込みと、野菜のサラダ。湯気が立ち上り、彼女の香りを運んでくる。シャンプーの花のような甘さの下に、肌の温もりを感じさせる、微かな汗の匂い。俺は箸を握り、視線を皿に固定した。
箸の音だけが、部屋に響く。雨音が、間を埋める。遥さんの息遣いが、近くて遠い。彼女の腕が、わずかに俺の視界を掠める。袖口から、ふわりと香りが流れる。柔らかく、女の人の体温を思わせる。俺の喉が、乾く。
「どうしたの、拓也くん」
遥さんの声が、静かに落ちる。俺は顔を上げた。彼女の目が、こちらを捉えていた。穏やかな微笑み。だが、その奥に、何か揺らぎがある。視線が、絡まる。俺の瞳が、彼女の唇に、首筋に、滑る。そこに、残香が宿っている気がした。
沈黙が、食卓を覆う。箸の先が、皿に触れる音。遥さんの息が、わずかに深くなる。俺の肌が、熱を持つ。首の後ろが、じわりと疼き始める。彼女の匂いが、鼻腔をくすぐる。シャンプーの甘さと、体臭の柔らかさが、混じり合って、俺の胸を締めつける。
「そんな目で、私を見るなんて」
遥さんの囁きが、耳に届く。微笑みのまま、低く、息を潜めて。俺の視線を、逃がさない。彼女の唇が、わずかに動く。言葉が、空気を震わせる。俺の頰が、熱くなる。羞恥が、胸の奥から湧き上がる。彼女の香りが、強くなる。まるで、意図的に近づけているかのように。
俺は視線を逸らした。皿を見つめる。心臓の音が、耳に響く。遥さんの息が、静かに続く。食卓の空気が、重く、甘く、絡みつく。彼女の残香が、俺の肌を撫でるように漂う。触れていないのに、全身が震える。息が、わずかに乱れる。
食事が終わり、遥さんが立ち上がる。皿を運ぶ背中。スカートの裾が揺れ、再び香りが尾を引く。俺は席に残り、拳を握った。夜の廊下が、静かに待っている。この家で、彼女の匂いが、いつまでも残る予感がした。
雨音が、続きを予感させる。
(1987文字)