黒宮玲司

細身の部下を支配する指先(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:重ねる指の静かな指導

オフィスの窓辺に、街灯の淡い光が差し込む。平日の夜、十時を回り、周囲のデスクはすべて空っぽだ。空調の低い唸りと、キーボードの控えめな音だけが響く。俺は部長室のデスクに座り、目の前のモニターを睨む。向かいに、細身の部下、美咲が座っている。二十五歳の彼女は、入社三年目。華奢な肩幅に、黒髪を後ろで軽くまとめ、シャツの袖をまくり上げた腕が、わずかに震えているのがわかる。

「美咲。このレポートの数字、ずれているな」

俺の声は低く、抑揚を抑えて発する。彼女の視線が、俺の顔からモニターへ、そして再び俺へ戻る。細い指がマウスを握りしめ、息を潜める気配が伝わる。ミスは些細な入力漏れだが、クライアント提出の資料だ。平日の夜のこの時間、二人きりで直すしかない。

「すみません、部長。すぐに修正します」

彼女の声は小さく、しかし澄んでいる。俺は椅子を少し引き、彼女のデスクに近づく。距離を詰めると、彼女の体温が微かに感じ取れる。甘いシャンプーの香りが、静かな空気に溶け込む。俺は彼女の隣に立ち、モニターを覗き込む。肩越しに、彼女の細い首筋が見える。白い肌に、血管が薄く浮かんでいる。

「ここだ。列をずらして、合計を再計算しろ」

俺は彼女の右手を取る。抵抗はない。むしろ、信頼を寄せるように、指を委ねてくる。彼女の掌は冷たく、細い骨格が掌に感じられる。俺の指が、彼女の指の上に重なる。ゆっくりと、マウスを動かす。彼女の指先が、俺の指の圧力に合わせて微かに曲がる。

「こうだ。焦らず、確実に」

低く囁く。彼女の息が、わずかに乱れる。キーボードを叩く音が、間延びして響く。俺の視線は、彼女の横顔に注がれる。長いまつ毛が伏せられ、頰に薄い紅が差す。肌が熱を帯び始めているのがわかる。指を重ねたまま、次のセルをクリックする。彼女の指が、俺の指に絡むように動く。微かな震えが、伝わってくる。

「部長の手、温かいですね……」

彼女がぽつりと漏らす。俺は視線を動かさず、ただ指の動きを導く。彼女の掌に、俺の親指が軽く沈む。柔らかい感触。細身の体躯ゆえか、力の抜け方が絶妙だ。信頼の合意が、ここに生まれる。彼女は俺の指導を、素直に受け入れる。

「ミスは繰り返すな。だが、こうして直せばいい」

俺の声はさらに低く、耳元に届く距離で。彼女の肩が、僅かに縮こまる。指を重ねた手が、モニターの上で止まる。修正は終わった。俺はゆっくりと、彼女の指を一本ずつ、俺の指から離す。だが、最後に人差し指を、軽く握る。彼女の瞳が、俺を見上げる。そこに、微かな疼きが宿る。

「ありがとうございます。部長がいらっしゃって、よかったです」

彼女の唇が、湿り気を帯びて動く。俺は頷き、彼女の指先を、もう一度撫でる。爪の先まで、静かに支配する感触。彼女の肌が、甘く反応する。震えが、手首まで伝わる。

「今日はこれで終わりだ。だが、明日はもっと丁寧に指導する。お前のような細身の身体で、こんなミスは許さん」

俺の言葉に、彼女の瞳がわずかに揺れる。信頼の奥に、期待の影。オフィスの静寂が、二人の緊張を包む。街灯の光が、彼女の細い腕を照らす。指先の余韻が、肌に残る。明日の夜、再びこのデスクで。特別な指導が、待っている予感を、彼女の息遣いが語っていた。

(第1話 終わり 約1950字)

━ 次話へ続く ━