藤堂志乃

盗撮視線に囚われ咀嚼の虜(第3話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第3話:耳朶を溶かす咀嚼の吐息

 美佐子の唇が、拓也の耳朶に触れる。柔らかく、湿った感触。息が、熱く吹きかけられる。「生で、味わわせてあげる」。その言葉が、耳の奥に染み込む。部屋の空気が、急に重く淀む。資料室の埃っぽい闇に、二人の吐息だけが響く。雨音が、外壁を叩き、孤立した世界を強調する。拓也の膝が、微かに震え出す。Mの渇望が、内側で爆ぜるように膨張する。

 彼女の視線が、真正面から絡みつく。闇のような瞳に、拓也の怯えと期待が映る。逃れられない。甘い合意の鎖が、身体を縛る。美佐子の指が、顎を掴んだまま、ゆっくりと耳元へ滑る。冷たい指先が、首筋をなぞる。ぞくりと、背筋に電流が走る。心臓の鼓動が、耳内で鳴り響く。ドクン、ドクン。彼女の息が、近づく。抑えられた、深い響き。

 唇が、耳朶を包む。ゆっくりと、開く。歯の先が、軽く触れる。咀嚼の始まり。クチュ、という微かな湿った音。拓也の身体が、びくりと跳ねる。音が、耳の穴に直接流れ込む。ゆっくりとした、ねっとりとした動き。唇が耳朶を挟み、歯が優しく圧迫する。噛み砕くような、味わうような。痛みはない。ただ、甘い支配の予感が、内側を掻き乱す。

 美佐子の咀嚼が、徐々に深まる。クチュ、クチュ。音がリズムを刻む。舌の先が、耳朶の縁を這う。湿り気が、じわりと広がる。拓也の息が、浅く乱れる。視線を合わせる。彼女の瞳が、細く輝く。満足げに、弧を描く唇の端。抑えきれない興奮が、下腹部に溜まる。M心が、刺激され、溶け出す。支配されたい。この音に、この視線に、完全に飲み込まれたい。

 彼女の指が、拓也の髪を掻き上げる。耳全体を露わに。咀嚼の音が、より鮮明に響く。クチュリ、クチュリ。歯が軽く沈み込む。甘い疼きが、首筋から胸へ広がる。身体の芯が、熱く火照る。合意の快楽が、波のように押し寄せる。恐怖は消え、ただ甘い隷属だけが残る。美佐子の息が、耳内に吹き込まれる。熱く、湿った風。彼女の吐息が、自分の鼓動と混じり合う。

 視線が、交錯する。間近で、互いの瞳が沈黙を語る。美佐子の奥底に、潜む渇望。拓也のMの疼きを、貪るような輝き。彼女の咀嚼が、止まらない。耳朶を優しく噛み、離し、再び咥える。クチュ、クチュ。音が、脳髄を直接震わせる。拓也の指が、無意識に彼女の腕を掴む。震える指先。合意の証。彼女は気づき、唇を微かに緩める。だが、咀嚼は続く。より深く、よりゆっくり。

 心の奥が、溶け始める。視線の重さが、胸を圧迫する。抑えられた息が、部屋に満ちる。ハァ、ハァ。互いの吐息が、絡み合う。雨音が、遠くで激しくなる中、この狭い闇が、二人の宇宙となる。拓也の膝が、床に沈み込むように弱まる。興奮の頂が、近づく。咀嚼の音に、身体が同期する。クチュンという深い響きとともに、軽い噛みつき。痛みのない、甘い刺激。M心が、爆発的に反応する。

 身体が、震え出す。全身が、熱い波に包まれる。部分的な絶頂のような、鋭い疼き。心の奥底で、何かが決定的に変わる。彼女の視線に、完全に囚われる瞬間。恥辱が、快楽に塗り替えられる。拓也の唇から、抑えきれない吐息が漏れる。アッ、という掠れた声。美佐子の咀嚼が、一瞬止まる。彼女の瞳が、深く覗き込む。満足の色。ゆっくりと、耳朶を離す。唇に、湿った光沢が残る。

 余韻が、部屋を覆う。耳朶が、熱く疼く。咀嚼の残響が、耳内で反響する。クチュ、クチュ。幻聴のように。拓也の息が、荒く整わない。視線が、互いに絡みつく。沈黙の重さが、甘い絆を生む。美佐子の指が、拓也の頰をなぞる。優しく、だが確実に支配を刻む。彼女の唇が、再び近づく。息が、混じり合う距離。

 「まだ、足りないわね」

 囁きが、耳に落ちる。低く、甘い響き。拓也の心臓が、再び跳ねる。頷く。言葉はいらない。ただ、視線で合意する。彼女の瞳が、輝く。秘密の深淵を、約束するように。

 美佐子の手が、拓也の腕を掴む。ゆっくりと立ち上がらせる。資料室の扉へ向かう。鍵を外す音、カチャ。雨音が近づく。彼女が振り返り、視線を向ける。闇の奥に、さらなる咀嚼の予感。

 「私のアパートへ。続きを……そこで、完全に味わわせてあげる」

 言葉が、決定的な誘いとなる。拓也の胸の奥が、甘く疼く。視線の檻が、深まる。外の雨に打たれながら、二人は闇の中へ踏み出す。心の変容が、静かに加速する。咀嚼の頂点が、待つ場所へ。抑えきれない余韻が、肌を熱く震わせる。

(1923文字)