相馬蓮也

男女王の視線に堕ちる衝動(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:バーで絡みつく女王の視線

 平日の夜、街の喧騒から遠く離れたカウンターに腰を下ろした。25歳の俺は、仕事の疲れをウイスキーで溶かすのが習慣だ。グラスに琥珀色の液体が揺れ、氷の音が静かに響くバー。薄暗い照明が木目のカウンターを艶やかに照らし、ジャズの低音が空気を震わせる。大人たちの吐息とグラスの触れ合う音だけが、この空間を満たしていた。

 バーテンダーが新しいグラスを滑らせてくる。俺は一口含み、熱い息を吐いた。今日も何も変わらない夜か。そんな思いが頭をよぎった瞬間、視線を感じた。カウンターの端、影に溶け込むように座っていた男。28歳くらいだろうか。黒いシャツの襟元から覗く首筋が白く輝き、長い指がグラスを優雅に回していた。「怜」という名札のようなものが、かすかに見えた。いや、名札じゃない。ただの幻か。

 彼の視線が俺を捉えた。鋭く、妖艶で、まるで獲物を値踏みする女王の目。心臓が一瞬、強く鳴った。俺は目を逸らさず、グラスを傾けた。なぜか、衝動的に。怜は薄く笑い、ゆっくり立ち上がった。足音が床に響き、俺の隣に滑り込むように座った。香水の甘い匂いが、風のように俺を包む。

「一人?」

 低く響く声。怜の唇が動くたび、俺の肌がざわつく。俺は頷き、言葉を探した。

「まあね。君は?」

「怜だ。君は?」

「浩太。25だよ」

 年齢を口にすると、怜の目が細まる。28歳、と彼は囁くように言った。会話は自然に流れた。仕事の話、街の夜の話。でも、怜の視線は俺を逃がさない。女王のように上から俺を見下ろし、時折、唇を湿らせる仕草が俺の胸を熱くする。欲望が、理屈を追い越す。俺の身体が、勝手に熱を帯び始めた。

 怜の指が、グラスの縁をなぞった。ゆっくりと、俺の方へ。カウンターの下で、俺の膝に触れるか触れないかの距離。息が荒くなる。怜はグラスを置き、俺の顔を覗き込んだ。

「浩太、君の目は面白い。衝動的だね」

 その言葉に、俺の心が震えた。怜の指先が、俺の顎に触れた。冷たく、細い指。ゆっくり撫でられ、肌が熱く痺れた。電流のように全身を駆け巡り、下腹部が疼きだした。俺は息を飲み、動けない。怜の視線に囚われ、女王の膝元に引き寄せられるような錯覚。

「こんな夜に、何を求めている?」

 怜の声が耳元で囁いた。吐息が首筋を撫で、俺の理性が溶け出した。指が顎を優しく持ち上げ、視線を絡め取った。肌の震えが止まらない。欲望が爆発しそうに膨れ、俺はただ頷くしかなかった。

「君は知っているはずだ。俺の視線に堕ちるんだ」

 怜の笑みが深まる。指が離れ、俺の胸に小さな余熱を残す。バーの空気が重く、俺の鼓動だけが鳴り響く。怜はグラスを傾け、静かに言った。

「今夜、俺の膝元へ来い」

 その言葉が、俺の身体を貫いた。疼きが爆発し、足が自然と立ち上がった。理屈などない。ただ、怜の視線に導かれる衝動。バーから出る足音が、夜の街に溶けていく。

 怜の後ろ姿を追い、俺の心はすでに堕ちていた。次に何が待つのか、想像するだけで肌が熱く震える。

(第1話 終わり 約1980字)

次話予告:怜の部屋で、黒い革の衣装に包まれた女王の膝元へ。首輪の儀式が、甘い疼きを呼び起こす……。