蜜環

清楚妻の黒髪に絡む視線(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:絡まる視線、溶ける拒絶

 翌朝。
 光がカーテンを透かし、遥の黒髪に細い線を描く。
 俺はベッドで目覚め、隣の吐息を聞く。
 遥の肩が露わ。黒髪が枕に広がり、汗の残り香を纏う。
 昨夜の影が、瞳の奥に残るか。
 起き上がり、キッチンへ。足音を抑えて。
 遥が後を追う。白いシルクのガウン。裾が膝に落ち、肌の白さを際立たせる。
 コーヒーの湯気が立ち、黒髪を揺らす。
 俺は近づき、腰を抱く。指を髪に沈める。
 絹の滑り。昨日の拓也の仕草を、思い浮かべる。
 遥の体が僅かに固まる。
 「今日も、仕事?」
 声が低く、探るように。
 彼女の瞳が逸れる。一瞬。
 「うん。午後から」
 唇が乾き、舌で湿らせる。

 午前十時。チャイムが鳴る。
 拓也だ。また。
 昨日と同じ、スーツ姿。長身が玄関を塞ぐ。
 「プロジェクトの続きで。悪いな、連続で」
 笑み。視線が遥の黒髪に落ちる。
 リビングへ。三人でテーブルを囲む。
 遥がお茶を注ぐ。黒髪が肩から滑り、湯気に混じる。
 拓也の目が、追う。絡みつくように。
 俺は気づく。胸の奥が、軋む。
 話が弾む。仕事の数字。提案の詳細。
 だが、拓也の指が、テーブルの端を叩く。リズムが、遥の髪の揺れに合る。
 食事の時間。遥が皿を並べる。
 サラダ。パスタ。平日昼の、軽いもの。
 拓也の皿に、遥がフォークを置く。
 黒髪が顔に落ち、頰を撫でる。
 拓也の手が伸びる。自然に。
 指先が髪に触れる。絡め、払う。昨日より、深く。
 「この髪、長いな。触り心地がいい」
 声が低く、遥の耳に届く。
 遥の唇が、湿る。舌が覗き、引き込む。
 瞳が拓也を捉え、揺らぐ。
 「ありがとう……」
 息が混じる。頰が、薄く紅潮。
 俺はフォークを握り、視線を逸らす。
 空気が、重くなる。糸が張り、切れそう。
 拓也は平然と、パスタを巻く。
 だが、視線は遥の黒髪に、執着する。

 拓也が帰る。午後一時。
 拓也の後ろ姿を遥が見送る。黒髪が腰に落ち、揺れる。
 扉が閉まる。静寂。
 俺は遥に近づく。
 「頻度が高いな、あいつ」
 探る声。
 遥が振り向く。瞳に、影。
 「仕事だから。気にしないで」
 指が髪を耳にかける。拓也の仕草を、なぞるように。
 俺の胸が、疼く。

 翌日。平日、午前十一時。
 俺は外出。クライアントとの打ち合わせ。帰宅は夕方。
 家を空ける。雨が降り始め、路地を濡らす。
 遥は一人。黒髪を後ろで束ね、室内にいる。

 遥の視点が、脳裏に浮かぶ。想像か、現実か。
 チャイムが鳴る音。拓也の声。
 「忘れ物した。昨日」
 リビングへ。ソファに腰かける。
 遥がお茶を運ぶ。黒髪が解けかけ、肩に落ちる。
 拓也の視線が、絡まる。深く。
 「遥さん、髪が乱れてる」
 立ち上がり、近づく。長身が影を落とす。
 指が黒髪に触れる。梳くように、ゆっくり。
 遥の肩が震える。
 「だめ……」
 囁き。小さく。
 だが、声が甘く、溶ける。拒絶が、誘う響きに変わる。
 拓也の息が、頰に近づく。熱く、湿る。
 唇が、僅かに触れそう。距離が、縮まる。
 遥の瞳が、揺らぐ。抵抗が、甘い痺れに変わる。
 指が髪を握る。強く、優しく。
 体が、僅かに傾く。合意の予感。
 だが、俺の帰宅の足音が、遠くに聞こえるか。
 拓也が引く。笑みを浮かべ。
 「またな」
 黒髪に、最後の視線を残し。

 夕暮れ。俺が帰宅。
 雨が止み、街灯が灯り始める。
 遥の声。「いらっしゃい」
 ワンピース姿。黒髪が湿り、頰に張りつく。
 夕食の匂い。ワインが、二つ。
 食卓で、語らう。今日の出来事。
 拓也の名は、出ない。
 だが、遥の唇が、湿ったまま。
 食後。ソファへ。
 遥の体が、寄り添う。熱く。
 吐息が、俺の首筋に落ちる。深く、乱れがち。
 手が胸に滑る。シャツを剥ぎ、肌に触れる。
 指先が、震える。迷いが見える。
 昨日の俺への震えと、違う。
 拓也の息を、思い出すか。
 俺は黒髪を掴む。引き寄せ、唇を奪う。
 舌が絡む。熱く、激しく。
 遥の体が応じる。腰が俺に沈み、火照る。
 ソファが軋む。汗が黒髪を濡らす。
 「あっ……ん」
 吐息が漏れる。甘く、切なく。
 頂点へ。遥の瞳が俺を捉える。
 深く、熱く。だが、指の動きに、ためらい。
 俺の背中に爪が沈むが、強くない。
 熱が募るのに、心が、揺れる。
 夜が深まる。体が沈む。
 遥の黒髪が、俺の肩に広がる。
 だが、瞳の奥。影が濃くなる。
 拓也の指先が、次に何を梳くのか。
 明日の昼、再びあの訪問が来るだろう。
 遥の拒絶が、いつ溶けきるのか。

(文字数:2048字)