緋雨

CA妻の視線、夫の知らぬ寝取られ(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:空港ラウンジの揺らぐ視線

 成田空港の国際線ラウンジは、平日夕暮れの薄暗い光に包まれていた。窓辺の街灯がぼんやりと灯り始め、外の滑走路を照らす光が、ガラスの向こうで静かに揺れている。客足はまばらで、ビジネススーツの男たちが新聞を広げ、酒グラスを傾けるばかり。低く響くジャズのメロディが、空気を柔らかく満たし、誰もが自分の世界に沈んでいる。

 美咲はカウンター席に腰を下ろし、グラスに注がれた白ワインを一口含んだ。28歳の彼女は、キャビンアテンダントの制服を纏ったままだった。深い紺のスカートスーツが、細い腰を優しく締め上げ、ストッキングに包まれた脚を長く見せている。長い黒髪を後ろでまとめ、首筋に白い肌が覗く。フライト後の疲れが、わずかに頰を緩めていたが、その瞳はいつも通り、静かな警戒を宿していた。

 夫の顔が、ふと脳裏に浮かぶ。同じ会社の営業マンで、穏やかな笑顔の男。結婚して三年、互いの不在を埋めるように、短い同衾の夜を重ねてきた。今日も彼は地方出張中だ。美咲はグラスを傾け、ワインの冷たい刺激を喉に流し込む。静けさが心地よいこのラウンジで、少しだけ息をつける時間。

 視線を感じたのは、その時だった。

 カウンターの端、革張りの椅子に座る男。30代半ばの拓也は、夫の同僚だった。グレーのスーツに身を包み、ネクタイを緩め、ウイスキーのロックを静かに回している。視線は、美咲の制服の襟元から、ゆっくりとスカートの裾へ。ストッキングの光沢をなぞるように、肌を這う。偶然の出会い。夫から聞いた名前が、ぴたりと重なる。

 美咲のグラスを握る手に力がわずかに加わる。肌が、微かに震えた。夫の同僚。知り合いのはずの男の視線が、こんなにも重いとは。彼女は視線を逸らさず、静かに息を吐く。胸の奥で、何かが息づく気配。

 拓也が、ゆっくりと立ち上がる。カウンターに近づき、空いた隣の席に腰を下ろした。酒の香りが、かすかに混じる。

「美咲さん、だよね。夫くんから話は聞いてるよ」

 低く抑えた声。夫の名前を、淡々と口にする。美咲は頷き、瞳を合わせる。拓也の目が、深く沈んでいる。制服の生地が、彼女の肩を優しく撫でるように感じるのは、錯覚か。

「ええ、拓也さん。こんなところで」

 言葉は短い。沈黙が、二人を包む。ラウンジのジャズが、ベースの低音を響かせる。拓也の視線が、再び彼女の首筋へ。白い肌に、淡い脈動が浮かぶのを、捉えているようだ。美咲の息が、わずかに深くなる。夫の顔を思い浮かべるのに、なぜか拓也の瞳が、重ねてくる。

 彼はグラスを置き、肘をカウンターに乗せる。距離が、僅かに縮まる。息の熱が、互いの頰に届きそうな近さ。

「フライト、お疲れ様。制服姿、綺麗だね。夫くん、羨ましいよ」

 言葉の端に、棘はない。だが、視線に宿る熱が、美咲の肌を甘く刺す。彼女の太腿が、スカートの下で微かに擦れ合う。抑制の糸が、静かに軋み始める。

 美咲はワインを一口。喉を滑る液体が、熱を帯びて落ちる。夫の話題。いつもなら、心を落ち着かせるはずの名前が、今は違う。拓也の視線が、彼女の唇を湿らせるのを、待っているようだ。

「夫は、今出張中です。いつも通り、忙しくて」

 声が、僅かに震える。拓也の瞳が、細められる。沈黙の隙間に、二人の息が重なる。ラウンジの空気が、張り詰め、肌にまとわりつく。美咲の胸元で、ブラウスが息に合わせて上下する。拓也の視線が、そこに留まる。制服のボタンの隙間から、淡い影が覗くのを、知っているかのように。

 彼女は、夫の笑顔を思い浮かべる。穏やかな日常。だが、拓也の視線が、その記憶を塗り替える。肌の奥が、甘く疼き始める。グラスを撫でる指先の感触が、異様に鮮やかだ。なぜ、この男の目が、こんなにも体を熱くさせるのか。美咲の瞳に、僅かな揺らぎが宿る。夫の知らぬところで、何かが、静かに動き出す予感。

 拓也が、ゆっくりと微笑む。視線が、絡みつく糸のように。

「また、機内で会えるかもね」

 言葉が、空気に溶ける。美咲の息が、乱れを隠して吐き出される。ラウンジの窓辺で、夜の闇が深まる中、二人の距離は、言葉を超えて、僅かに縮まっていた。

 次話、機内での予期せぬ接近が……。

(文字数:1987字)