蜜環

男の娘の蜜鎖と悶え(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:妖視の棘、指先の蜜糸

 平日の夜のバー。
 街灯の淡い光がガラス窓に滲み、雨音が低く響くカウンター。
 俺はグラスを傾け、氷の微かな軋みを味わう。
 周囲は大人の影ばかり。スーツの男が独り酒を煽り、ジャズの調べが空気を震わせる。
 視線を感じた。
 端席から。
 黒いドレスが肌に張り付き、長い脚を交差させた女——いや、男の娘。
 玲、25歳。
 自己紹介は後。
 今はあの瞳。
 妖艶に細められ、俺の胸を刺す棘のように。
 睫毛の影が揺れ、唇の端が僅かに上がる。
 誘うのか。
 試すのか。
 グラスを置く俺の手を、玲の視線が追う。
 カウンターを滑るように近づき、隣に腰を沈める。
 香水の甘い霧が漂う。
 バーテンダーがウイスキーを注ぐ間、指先が触れた。
 互いの。
 偶然か。
 玲の細い指が俺の甲に絡み、離れない。
 熱い。
 脈打つような。
 「ここ、静かね」
 玲の声、低く掠れ、耳朶を撫でる。
 俺は黙って指を返す。
 絡め、引き、微かな力で測る。
 玲の瞳が揺らぐ。
 一瞬、息が止まる。
 欲望の糸が、そこで生まれた。
 絡みつく。
 解けない。

 店を出たのは、雨が強まる頃。
 タクシーの革シートに沈み、玲の肩が俺に寄る。
 家は近い。
 俺の部屋、都心のマンション。
 エレベーターの鏡に、二つの影が映る。
 玲の指が俺のネクタイを緩め、首筋をなぞる。
 冷たい雨粒が、玲の頰を伝う。
 拭う俺の手を、玲が掴む。
 唇が触れそうで、触れない。
 ドアが開く。
 室内の薄暗い闇が、二人の息を飲み込む。

 ベッドサイドのランプが、橙の光を落とす。
 玲はドレスを脱ぎ捨て、シルクの下着姿で立つ。
 滑らかな肌、白く輝き、腰の曲線が息を呑む。
 男の娘の証、股間が僅かに膨らむ。
 だが今は、そんな区別など無意味。
 玲の瞳が俺を捕らえ、囁く。
 「縛って」
 自発の言葉。
 甘く、熱く。
 引き出しからシルクの紐を取り出す。
 黒く艶めくそれを、玲の手首に巻く。
 緩く、きつく。
 玲の吐息が漏れる。
 熱い。
 肌が震え、紐に食い込む。
 手首をベッドヘッドに固定。
 玲の体が微かに弓なり、胸が上下する。
 俺の指が、玲の鎖骨を滑る。
 ゆっくり。
 玲の瞳が細まる。
 主導権は、誰のものか。
 玲の唇が開き、息が俺の頰を撫でる。
 「もっと……強く」
 紐がきつく締まる。
 玲の腰が揺れ、秘部が熱を帯びる気配。
 指先でなぞる俺を、玲の視線が刺す。
 逆襲の予感。
 力の綱引きが、始まる。
 肌の疼きが、夜を深くする。

 玲の吐息が、部屋を満たす。
 熱く、湿り、俺の理性を溶かす。
 だが玲の瞳は、未だ俺を試す。
 紐の下で、手首が微かに動く。
 逃れようと?
 誘おうと?
 分からない。
 それが、甘い。
 玲の脚が俺の腰に絡みつき、引き込む。
 合意の証、玲の声が響く。
 「これで……いいの?」
 俺の返事など、待たない。
 玲の体が震え、蜜のような汗が光る。
 夜は、まだ始まったばかり。
 この糸が、どこへ絡まるのか。

(第2話へ続く)