藤堂志乃

カウンター下の女王視線(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:カウンター下の微かな鼓動

 雨の降りしきる平日の夜遅く、遥は高級ホテルの重厚なガラス扉をくぐった。25歳の彼女は、仕事の疲れを紛らわせるように、この街の片隅に佇む静かなホテルを選んだ。ロビーは柔らかな照明に包まれ、街灯の光が窓ガラスに滲んでいた。カウンターの向こうに、ひとりの女性が佇んでいた。受付嬢の名札に「麗子」と記され、28歳の落ち着いた美しさが、夜の空気に溶け込んでいた。

 遥はカウンターに近づき、予約の確認を口にした。声は自然と低くなった。麗子の視線が、ゆっくりと遥の顔を捉えた。それは、ただの業務的なものではなかった。深く、静かに、遥の内側を覗き込むような視線。瞳の奥に、底知れぬ闇が揺らめき、遥の胸に微かなざわめきを呼び起こした。言葉は交わさない。ただ、麗子の指先がキーボードを滑る音だけが、ロビーの静寂に響いた。

 「特別室をご用意しております」

 麗子の声は、抑揚を欠いた低さで響いた。特別室。遥は予約していなかったはずだ。だが、麗子の視線がそれを当然のように肯定した。遥の喉が、僅かに乾いた。カウンターの向こうで、麗子の姿勢が微かに変わった。膝を寄せ、身体の重心を移すその仕草に、遥の視線は自然と下へ落ちる。カウンターの下。そこに、微かな鼓動のようなものが、遥の肌に伝わってきた。麗子のスカートの裾が僅かに揺れ、布地の下で何かが息づいている気配。遥の指先が、カウンターの縁を無意識に握りしめた。

 それは、ただの錯覚か。いや、違う。麗子の視線が、再び遥を捕らえた。その瞳に宿るのは、女王のような静かな支配欲。言葉はない。ただ、沈黙が二人の間に重く横たわった。遥の内側で、何かが蠢き始めた。胸の奥が、熱く疼き出した。麗子の息づかいが、カウンター越しに感じ取れるほど近く、遥の耳朶をくすぐる。抑えられた吐息。ゆっくりと、深く。遥の背筋に、甘い震えが走った。

 特別室の鍵を渡される瞬間、麗子の指が遥の手の甲に触れた。冷たく、滑らかな感触。だが、その下に潜む熱が、遥の皮膚を焦がす。麗子は微笑まない。ただ、視線を外さない。遥の心臓が、速く鳴り始める。カウンター下のあの鼓動が、遥の身体に響き渡った。自分の下腹部に、似たような疼きが芽生えていた。ふたなりとしての秘めた衝動が、遥自身にも宿っていることを、麗子の視線が知っているかのように。

 エレベーターに乗り込み、部屋の扉を閉めた後も、遥の肌は熱を帯びていた。ベッドに腰を下ろし、目を閉じた。麗子の視線が、脳裏に焼き付いて離れない。あの静かな支配。カウンター下の微かな鼓動が、遥の太腿の内側を震わせる。指をスカートの下へ滑らせ、遥は息を詰めた。触れるな、触れるなと自分に言い聞かせるのに、身体は逆らう。麗子の瞳の奥に潜む女王の気配が、遥の内側を掻き乱す。

 夜の静寂の中で、遥の息が乱れ始めた。麗子の視線が遥を縛りつけた。言葉一つなく、ただ見つめるだけで、心を支配する。あの鼓動が、遥の秘部を疼かせる。ゆっくりと、指が動き出した。抑えきれない衝動に、遥の身体が弓なりに反った。麗子の存在が、遥のすべてを塗り替える予感。沈黙の重みが、甘い余韻を残す。

 だが、これは始まりに過ぎない。遥の胸に、明日、再びあのカウンターを訪れる衝動が芽生えていた。麗子の視線に囚われ、落ちていく自分を、遥は静かに受け入れ始めていた。

(1827字)

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