篠原美琴

孕んだ男の娘の貧乳に忍び寄る視線(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:雨の残る喫茶店の視線

 平日の夕暮れ、街は雨上がりの湿気を帯びていた。灰色の空が低く垂れ込め、路地裏の古い喫茶店「琥珀」のガラス窓に、街灯の淡い光が滲む。私は佐倉遥、三十五歳の独身。仕事の疲れを紛らわせるように、この店をよく訪れる。店内はいつも通り、静かだ。カウンターの奥でマスターがグラスを拭き、奥のテーブル席に、一人の客が座っている。

 彼は二十歳の青年・悠だった。後で知ることになる名だ。今はただ、ゆったりしたベージュのシャツを纏った、細身の青年。窓際の席で、コーヒーカップを両手で包むように持ち、視線を外に向けている。妊娠五ヶ月目だということは、まだ知らない。ただ、シャツの柔らかな布地の下に、僅かな膨らみが息づいていることに、ふと目が留まった。腹部ではなく、それより上、胸元の微かな起伏。貧しい、繊細な輪郭が、布の皺に沿って浮かび、消える。

 私はカウンターに腰を下ろし、いつものブラックコーヒーを注文した。マスターの視線が、悠の方へ一瞬だけ滑る。店主の慎重な眼差しに、何か事情があるのかもしれない。私はコーヒーを啜りながら、鏡越しに彼を観察した。悠の指先は細く、白く、カップの縁をなぞるように動く。息が浅い。シャツの襟元がわずかに開き、鎖骨の影が覗く。その下、貧乳の柔らかな曲線が、呼吸に合わせて僅かに揺れる。男の娘らしい、華奢で中性的な体躯。だが、その輪郭は、ただの華奢さを超えて、甘い疼きを呼び起こす。

 彼の視線が、鏡に映る私に触れた。僅か一瞬。悠は慌てて目を伏せ、カップに口をつける。沈黙が、店内に広がる。私は動かず、ただその様子を追った。心臓の鼓動が、耳元で静かに鳴る。悠の首筋に、薄い汗の光沢。シャツの布が肌に張り付き、貧乳の先端が、ほんの少しだけ尖った影を落とす。あの膨らみは、妊娠の影響か。それとも、元来のものか。視線を逸らした彼の頰が、僅かに上気している。

 マスターが新しい客を迎えに奥へ引っ込む。店内はさらに静かになる。私は立ち上がり、悠の隣のテーブルへ移った。理由などない。ただ、距離を縮めたくなった。悠の体温が、空気に溶け出すような気配。妊娠した腹の微かな膨らみが、シャツの下で息づいているのがわかる。ゆったりした服が、それを優しく覆い隠す。だが、胸元の貧しい曲線は、隠しきれず、布の皺に沿って誘うように浮かぶ。

 「ここ、座ってもいい?」

 私の声は低く、抑え気味。悠は一瞬、息を止めた。ゆっくりと顔を上げ、頷く。言葉はない。ただ、視線が絡む。黒い瞳に、私の姿が映る。悠の唇が、僅かに開き、閉じる。沈黙が、二人の間に落ちる。私は席に座り、コーヒーを置いた。テーブルの上で、互いの手が、二十センチほどの距離を保つ。

 悠の呼吸が、聞こえるほどに浅い。シャツの胸元が、上下する。貧乳の繊細な輪郭が、布越しに揺らめく。あの影は、触れれば柔らかく沈むだろうか。妊娠の体が、熱を溜め込んでいる。腹の膨らみが、僅かに動く。内側で、何かが息づく気配。私は視線を落とさず、彼を見つめた。悠の目が、揺れる。逸らそうとして、戻る。互いの息が、止まる。

 時間は、ゆっくりと流れる。店内のジャズが、かすかに響く。雨の残る窓ガラスに、街灯が反射する。悠の指が、カップの取っ手を握りしめる。爪が白くなるほど。私は、自分の手の甲に、熱を感じた。言葉はない。ただ、視線の重みが、肌を這う。悠の貧乳の輪郭が、シャツに浮かぶ。尖った影が、息に合わせて震える。私は喉を鳴らし、息を吐いた。

 彼の視線が、私の唇に落ちる。一瞬の、ためらい。悠の頰が、赤らむ。妊娠した体が、僅かに身を寄せるように動く。距離は変わらない。だが、空気が、熱を持つ。私はコーヒーを啜り、沈黙を味わった。悠の吐息が、かすかに漏れる。甘く、湿った音。

 マスターが会計を告げる声に、我に返る。悠が立ち上がる。私は後を追う。レジで並び、財布を出す。悠の背中が近い。シャツの下、腹の膨らみが、布を優しく押し上げる。胸元の貧しい曲線が、シャツ越しに僅かに覗く。私は手を差し伸べ、代金を払おうとする。悠の指先が、私の手に触れそうになる。

 触れない。僅か一ミリの隙間。熱い息が、指先に絡む。悠が振り返り、視線で私を捉える。息が止まる。沈黙が、肌を震わせる。私は頷き、ドアを開けた。外の冷たい空気が、熱を残す。

 悠の足音が、路地に消える。私は店内に立ち尽くし、指先の余韻を噛みしめた。あの視線。あの距離。明日も、この店に来るだろうか。

(約1950字)

次話へ続く──再会の喫茶店で、沈黙が深まる。