この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。
## 第1話:歓迎パーティーで視線が絡む夜
会社の歓迎パーティーは、いつものようにビルの地下宴会場で始まった。照明が柔らかく天井を照らし、テーブルにはビールジョッキとつまみが並ぶ。28歳の私、佐藤美香は新入社員の歓迎役として、グラスを片手に同僚たちと談笑していた。入社5年目、経理部のデスクワークが中心の日常。派手な変化などないはずのこの夜が、少し違う予感を運んできた。
新入社員の一人、30歳の山田健太が目に入った。営業部から異動してきたばかりで、背が高く、穏やかな笑顔が印象的だ。スーツの袖口から覗く腕時計が、さりげなく大人の余裕を語っている。乾杯の挨拶で彼の視線がこちらに向き、軽く会釈を交わした瞬間、心臓が少し速くなった。なぜだろう。ただの同僚のはずなのに。
パーティーが進むにつれ、席が混ざり始める。私は健太の隣に座る形になった。ビールを一口飲む彼の喉仏が、意外に近く感じる。「佐藤さん、経理の仕事って大変そうですね。僕、数字は苦手で」と彼が笑って言った。声は低めで、響きが心地いい。「いえ、慣れですよ。あなたこそ営業から異動なんて、変化が大きすぎますね」と返すと、彼は肩をすくめて頷いた。
話が弾む中、ふと日常の失敗談が出てきた。私が先週、コンビニでアイスを買おうとして足を滑らせ、転びそうになった話だ。「棚の前でバランス崩して、結局アイス落として溶けちゃったんです。店員さんに謝りながら、恥ずかしくて逃げるようにレジ行きましたよ」と笑いながら話すと、健太が声を上げて笑った。「僕も似たことありますよ。先月、コンビニの自動ドアに頭ぶつけて、店員さんに『大丈夫ですか?』って心配されました。男のくせに情けないですよね」と彼も自虐的に続ける。二人は顔を見合わせて、くすくすと笑い合った。あの瞬間、肩が少し触れ合い、互いの体温が伝わってきた。些細なユーモアが、知らないはずの距離を一気に縮めた気がした。
笑いが収まると、場の空気が少し変わった。健太の視線が、私の顔をゆっくりと這うように動く。目が合った瞬間、彼の瞳に何か熱いものが宿っているのがわかった。私の唇が、無意識に軽く湿った気がした。ビールのせいか、それともこの視線のせいか。心の中で小さなざわめきが起きる。仕事の話に戻ろうとしたが、言葉がうまく出てこない。
周囲の喧騒が遠のく中、健太がグラスを置いて言った。「佐藤さん、意外と可愛い笑顔ですね。パーティー、楽しいですけど、もっとゆっくり話したいなあ」。その言葉に、胸がどきりと鳴った。二次会に誘うようなニュアンス。拒否する理由はないのに、頰が熱くなる。「ええ、いいですよ。でも、飲み過ぎないように」と曖昧に返事をする私。視線が再び絡み合い、今度は逃げられなかった。
パーティーがお開きになる頃、健太がそっと耳打ちしてきた。「二次会、居酒屋でどうです? 近くにいい店知ってるんです」。心が揺れる。日常の延長のはずなのに、この誘いに乗ったら、何かが変わりそう。唇を軽く噛みしめ、頷いた瞬間、健太の目が優しく細まった。その視線が、私の唇に注がれるのを意識して、息が少し浅くなった。無意識に舌先で唇をなぞる仕草をしてしまい、慌てて目を逸らす。でも、心の奥で、何か甘い予感が膨らみ始めていた。
二次会の扉が開くその時、私の唇はすでに、次の瞬間を待ちわびているようだった。