緋雨

女子アナ野外絶頂の取引密会(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:公園ベンチの濡れた視線

 午後の公園は、木々の葉ずれが静かな調べのように響いていた。28歳の女子アナウンサー、佐倉美咲は、ベンチの端に腰を下ろし、隣に座る取引先の男性、35歳の佐藤浩一を横目で見た。スーツ姿の彼は、書類を広げながら穏やかな視線を落としている。美咲の局と浩一の会社は、重要なスポンサー契約を結ぶ瀬戸際だった。この密会は、そんな商談の場。野外を選んだのは、浩一の提案だ。社内の目がない場所で、互いの本音を交わすため。

 美咲はマイクの前で鍛えた落ち着いた声で切り出した。「佐藤さん、今回の企画についてですが、露出枠の増設を検討いただけますか? 視聴率のデータもお持ちしました」 書類を差し出す手が、少しだけ震えた。浩一の視線が、彼女の指先に留まる。静かな緊張が、空気に溶け込む。浩一はゆっくり頷き、書類を受け取った。「もちろんです、美咲さん。君の局のクオリティは信頼しています。ただ、こちらの予算配分で……」 彼の声は低く、落ち着いていた。美咲の胸に、かすかな揺らぎが生まれる。商談のはずなのに、この距離感が妙に意識される。

 浩一が鞄から水筒を取り出した。無言で蓋を回し、美咲に差し出す。「暑いですね。一口どうです?」 美咲は礼を言い、受け取った。蓋を回す感触が、意外に緩かった。ごくりと喉を鳴らし、水を飲もうとした瞬間、ぷしゃりと水が零れ落ちる。膝に冷たい雫が広がり、美咲のスカートがじんわり濡れた。「あっ……」 小さな声が漏れる。浩一の目が、瞬時に彼女の膝へ。美咲は慌てて水筒を置き、ハンカチを探すが、鞄の中を探る手が空回りする。浩一は静かに自分のハンカチを差し出し、無言で膝に近づく。拭こうとする仕草に、美咲の頰が熱くなった。

 その瞬間、二人は顔を見合わせた。浩一の唇に、微かな笑みが浮かぶ。美咲も、思わずくすりと息を漏らす。言葉はない。ただ、零れた水のコミカルな失敗が、沈黙の空気を柔らかく溶かした。浩一の手がハンカチを膝に当て、軽く押さえる。布地越しに伝わる温もり。美咲の心臓が、少し速くなる。「すみません、蓋が緩んでましたね」 浩一の声に、珍しく照れた響き。美咲は首を振り、「いえ、私の不注意です」と返す。拭き終わり、ハンカチを返す手が、わずかに触れ合う。指先の感触が、残る。

 商談は再開した。数字を並べ、条件を詰める。だが、美咲の意識は、膝の湿った感触と、浩一の視線に囚われていた。彼の目が、時折彼女の唇や首筋を掠める。意図的か、無意識か。美咲自身も、浩一の肩幅の広さや、シャツの隙間から覗く肌の色に、視線を奪われる瞬間があった。静かなベンチで、言葉の合間に生まれる沈黙。それが、互いの距離を少しずつ削っていく。浩一の提案が、美咲の予想を超える柔軟さを見せた。「美咲さんの熱意に、応えたいと思います。次はもっと具体的に」 彼の言葉に、美咲の胸が温かくなる。商談以上の、何かが芽生え始めている。

 陽が傾き始めた頃、浩一が立ち上がった。「今日はこれで。続きはまた」 美咲もベンチを離れ、互いに軽く頭を下げる。だが、別れ際、浩一の視線が美咲の目を捉えたまま、離れない。数秒の沈黙。美咲の内側で、何かが疼く。「お気をつけて、美咲さん」 浩一の声が、少し低く響く。美咲は頷き、背を向けたが、心臓の鼓動が収まらない。公園の出口で振り返ると、浩一の姿は木陰に溶け、静かに去っていく。あの視線が、次なる密会を予感させた。膝に残る湿り気のように、甘い余韻が美咲を包む。