久我涼一

友の妻の熟れた視線と禁断の熱(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:台所の指先と夕暮れの吐息

 平日の夕暮れ、街灯がぼんやりと灯り始める頃、浩一は再び健一の家を訪れた。健一の出張が始まって二日目。昨夜の電話で、綾子から「何か用事があったら来て」と軽い言葉をもらっていた。あの視線、あの指先の感触が、浩一の胸に残り続けていた。仕事帰りの足取りは自然とここへ向かい、玄関のチャイムを押す手がわずかに震えた。

 ドアが開き、綾子が現れた。42歳の彼女は、淡いグレーのニットにゆったりしたスカートを纏い、黒髪を無造作に後ろで留めていた。室内に差し込む夕暮れの柔らかな光が、彼女の肌に淡い影を落とす。首筋が、かすかに汗ばんで艶めいていた。

「浩一さん、来てくれたのね。入って」

 綾子の声は穏やかだが、瞳に昨夜の余韻が宿っている。浩一は頷き、靴を脱いでリビングへ。部屋は静かで、窓の外では雨がぱらつき始め、街の疲れた息づかいを強調していた。テーブルには一人分の夕食の皿が片付けの途中、綾子の日常の孤独がそこに表れていた。

「健一から連絡あった? こっちは順調だって」

 浩一はソファに腰を下ろし、尋ねる。綾子はキッチンからグラスを持ってきて、ワインを注いだ。赤い液体が揺れる様子が、彼女の指の細やかさを際立たせる。

「ええ、朝に。忙しいみたい。でも、浩一さんが来てくれてよかったわ。一人でご飯作るのも、なんだか味気なくて」

 彼女の言葉に、浩一の胸がざわついた。健一の不在が、部屋の空気をより濃密にしている。綾子は台所に戻り、夕食の後片付けを始めた。浩一は立ち上がり、自然に手伝おうとシンクへ近づく。狭いスペースで、二人の肩が触れそうになる。昨夜の記憶が蘇り、浩一の息がわずかに乱れた。

「手伝うよ。皿、洗うから」

 浩一がスポンジを手に取ろうと手を伸ばす。その瞬間、綾子の指先が重なった。柔らかな肌の感触が、電流のように伝わる。昨夜より長く、熱く。綾子は手を引かず、ただ小さく息を吐いた。指の腹が互いに擦れ、湿ったような温もりが広がる。

「あ……浩一さん」

 綾子の声がかすれ、視線が絡み合う。台所の蛍光灯の下で、彼女の瞳は深く濡れていた。浩一は手を離せない。指先が絡みつくように動き、皿を洗う動作が、ただの口実に変わっていく。綾子の息遣いが熱を帯び、肩がわずかに寄り添う。ニットの生地越しに、彼女の体温が伝わってきた。

「綾子さん……」

 浩一の声も低くなる。二人はシンクの前で、互いの指を確かめるように触れ続ける。水音が部屋に響き、雨の音がそれを包む。綾子の指は細く、しかし力強く浩一の手に絡みつく。熟れた果実のような柔らかさで、心の奥を掻き乱す。

 やがて綾子が手を引き、振り返った。頰が上気し、唇がわずかに開いている。

「浩一さん、座りましょうか。ワイン、飲んで」

 リビングのソファへ移る。夕暮れの光が薄れ、部屋にランプの柔らかな明かりが灯る。綾子は浩一の隣に腰を下ろし、グラスを傾けた。ワインの香りが漂い、二人の距離を縮める。会話は自然に、健一の不在の日常へ移った。

「健一はいつも忙しいの。最近は、夜遅く帰ってきて、すぐに寝てしまうわ。私も、ただ待ってるだけの日々で……なんだか、冷めてしまったみたい」

 綾子の言葉は静かだが、重い。夫婦の20年が、淡々と語られる。浩一はグラスを握りしめ、彼女の横顔を見つめる。首筋の汗が一筋、鎖骨へ流れていく。視線が肌を撫でるように、綾子の体が反応した。肩が小さく震え、膝が寄り添う。

「浩一さんの視線、感じるわ。昨夜から、ずっと……」

 綾子の吐息が熱い。浩一の胸に、責任と衝動の狭間で揺れる疼きが広がる。親友の妻。だが、この熱は日常の延長線上で生まれたものだ。抑えきれない。浩一はゆっくりと手を伸ばし、綾子の肩を抱いた。ニットの柔らかな感触が掌に沈み込む。彼女の体温が、じんわりと染みてくる。

「綾子さん、これは……」

 言葉を探すが、綾子は体を寄せ、浩一の胸に頰を預けた。熟れた胸の膨らみが、腕に押しつけられる。息が混じり合い、互いの鼓動が響き合う。浩一の唇が、ゆっくりと綾子の額へ、頰へ近づく。彼女の吐息が耳元で熱く、甘く。

 唇が触れそうになる寸前、浩一は止まった。理性の糸が、かろうじて繋がっている。綾子の瞳が上目遣いに見つめ、唇が震える。

「浩一さん……もっと……」

 その吐息が、部屋に溶けゆく。夕暮れの雨音が、二人の衝動を優しく包む。浩一の胸に、次なる熱の予感が、静かに、しかし確実に膨らんでいた。この疼きが、どこへ導くのか。抑えきれぬ欲望の扉が、わずかに開き始めていた。

(約1980字)