黒宮玲司

新人の視線に堕ちる上司の理性(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:残業の膝触れが理性の壁を溶かす

 オフィスの照明が一つずつ消えていく音が、静かに響いた。平日夜のフロアは、廊下の足音すら途絶え、雨の雫が窓ガラスを叩くだけ。彩花の言葉が耳に残る。「残業お手伝いします」。私はデスクの書類を睨み、喉を鳴らす。管理職として、部下の申し出を断る理由はない。だが、彼女の瞳に宿る輝きが、理性の隙を突いていた。

「…わかった。なら、隣でこの報告書のチェックを手伝ってくれ」

 私は低く言い、隣の椅子を引いた。彩花は素早く動き、資料を抱えて座る。彼女の体温が、すぐ傍らに感じられる。黒いスーツの裾が、私の膝に軽く寄り添う。モニターの青白い光が、二人の顔を照らす。外の街灯が、雨に滲んでぼやけていた。

 作業を始める。売上データの修正点を示し、彼女にキーボードを叩かせる。彩花の指が素早く動き、画面に数字を並べる。25歳の集中力は鋭く、質問も的確だ。だが、その視線が時折、私の横顔を掠める。息づかいに熱を帯び、上から下へゆっくりと。視線の重みが、首筋に落ちるようだった。

「ここ、数字がずれていますね。黒崎さん、確認を」

 彼女の声は低く、喉から絞り出すように甘い。私は頷き、画面に身を寄せる。すると、彩花の膝がテーブルの下で、私の脚に触れた。スーツ生地越しに、柔らかな圧力。偶然か。だが、彼女は動かず、むしろ微かに寄せてくる。熱が伝わり、肌が疼く。私は無視を装い、声を抑える。

「そうだな。修正して、次に進もう」

 キーボードの音が響く中、彼女の膝の接触が続く。軽く、しかし確実に。私の集中が乱れ、資料の文字が滲む。彩花の息が、耳元に近づく気配。彼女は身を寄せ、モニターを指差すふりで、肩が触れる。香水の甘い匂いが、鼻腔をくすぐる。オフィスの静寂が、二人の間合いを狭める。

「黒崎さん、もっと近くで教えてください」

 耳元で囁く声。低く、湿った響きが鼓膜を震わせる。彼女の唇が、わずかに私の耳たぶを掠める。膝の圧力が強まり、太ももの内側まで熱が染みる。私は息を止め、理性を呼び戻す。管理職だ。こんな誘惑に、揺らぐわけにはいかない。だが、体が動かない。視線を上げると、彩花の瞳が私を捉えていた。黒く、深く、獲物を絡め取るように。

「彩花…これは業務だ。集中しろ」

 私の声は低く、抵抗の意志を込める。だが、彼女の唇が弧を描く。微笑みではなく、静かな支配の合図。膝がさらに寄せられ、脚全体が絡みつくように触れる。熱が下腹部に集まる。私は椅子を引こうとするが、彼女の手がデスクの下で、私の膝を押さえる。爪の先が、スーツの生地をなぞる。

「業務、ですか。でも、黒崎さんの熱が伝わってきますよ」

 声がさらに低く、息が首筋にかかる。彼女の視線が、私の唇を舐めるように落ちる。抵抗の壁が、じわりと溶け始める。オフィスの雨音が、鼓動を掻き立てる。私は喉を鳴らし、彼女の瞳を見つめ返す。25歳の新人が、こんなに静かに主導権を握る。私の理性が、彼女の膝の熱に負けそうになる。

「…お前、何を」

 言葉が途切れる。彩花の顔が近づき、唇が私の耳に触れる。柔らかな感触が、電流のように走る。彼女の膝が、私の脚を優しく挟み込む。抵抗の意志が、甘い疼きに塗り替えられる。私は目を閉じ、息を吐く。管理職のプライドが、彼女の視線に屈する瞬間。

「黒崎さん、私に任せてください。あなたを、楽にします」

 囁きが終わるや、彼女の唇が私の唇に重なる。柔らかく、しかし確実に。舌先が軽く入り、甘い味が広がる。私は一瞬、押し返す手を止める。合意のキス。理性が崩れ、代わりに欲求が湧き上がる。彼女の主導で、唇が深く絡み合う。オフィスの静寂が、二人の息遣いを強調する。

 キスが解けると、彩花の瞳が輝く。彼女の手が、私のシャツの襟に伸びる。ゆっくりと、ボタンを一つ外す。指先が胸板に触れ、肌をなぞる。熱い疼きが広がる。私は抵抗せず、彼女の動きに身を委ねる。次のボタンに手がかかる。だが、彩花の視線が、さらに深い欲望を宿す。

 彼女の膝が離れ、手がデスクを叩く音が響く。残業の書類が、乱雑に散らばる。彩花は立ち上がり、私の椅子を引く。低い声で、命じるように。

「黒崎さん、こっちに来てください。まだ、終わっていません」

 ソファを指す彼女の瞳に、次なる一手が潜む。私の理性は、すでに彼女の熱に絡め取られていた。この夜のオフィスで、彩花の支配が深まる予感が、肌を震わせる。

(第2話 終わり)

(約1980字)