緋雨

姉の匂いに沈む剃られた肌(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:仕事帰りの甘い汗の残り香

 夕暮れの街灯が窓辺に淡い影を落とす頃、遥はいつものようにアパートの扉を開けた。32歳の彼女は、血縁のない義弟である悠と、この静かな二室の住まいに暮らしている。悠は28歳、互いに言葉少な関係を保ちながら、数年という月日を共有してきた。仕事の疲れを纏った遥の足音が、廊下に小さく響く。彼女の控えめな胸元から、かすかな甘い汗の香りが立ち上っていた。一日の蒸れを帯びた、柔らかな匂い。オフィスの空調に閉じ込められた体温が、ようやく解放され、外気に触れて微かに変化したものだ。

 悠は台所で夕餉の支度を終え、テーブルに皿を並べていた。背の高い彼の肩が、わずかに固くなる。遥の帰宅の気配を、足音だけで察知したのだ。彼女の姿が視界に入る。黒いブラウスに包まれた細い体躯。胸の膨らみは控えめで、布地の下に静かに息づいている。悠の視線が、無意識にそこへ落ちる。遥はコートを脱ぎ、椅子に腰を下ろした。言葉はない。ただ、互いの存在が空気を満たす。

「ただいま」

 遥の声は低く、抑揚を欠いていた。悠は頷くだけ。食卓に座る二人の間に、沈黙が降りる。湯気の立つ味噌汁の香りが混じり、遥の汗の匂いを優しく包む。だが、悠の鼻腔には、それでも彼女の体臭が鮮やかだった。首筋から胸元へ、ブラウスを優しく押し上げる呼吸に連れられて漂う。甘く、わずかに塩気を帯びた。仕事着に染みついた一日分の熱が、ゆっくりと解けていく匂い。

 悠の指が箸を握る力が、微かに強まる。視線を皿に落とすが、遥の胸元が意識の端に残る。控えめな膨らみは、息をするたび静かに上下する。布地の隙間から、ほのかに肌の白さが覗く。汗の湿り気が、そこを柔らかく濡らしているのだろうか。悠の息が、わずかに乱れた。食卓の空気が、張りつめる。遥は気づかない。箸を動かし、静かに噛む。彼女の唇が、米粒を優しく含む様子を、悠は横目で追う。

 沈黙の中で、香りが濃くなる。遥の体が椅子に沈むたび、胸元がわずかに開き、匂いが悠の側へ流れ込む。甘い。女の体温を思わせる、抑制された甘さ。悠の喉が、乾く。視線を上げると、遥の横顔。疲れた目元に、長い睫毛が影を落とす。彼女の首筋に、汗の粒が一筋、光る。指先で拭う仕草さえ、悠の胸をざわつかせる。

 食事が進むにつれ、遥の呼吸が深くなる。ブラウスが体に寄り添い、控えめな胸の輪郭を浮かび上がらせる。貧しい膨らみは、かえって繊細で、布地の下で静かに震えているようだ。悠の視線が、そこに絡みつく。離せない。香りが、視線を導く。甘い汗の残り香が、食卓の空気を支配し始める。遥の無防備な存在が、悠の内側を静かに掻き乱す。

 遥は箸を置いた。満足げなため息が、胸を優しく波立たせる。

「おいしかった。ありがとう」

 悠は小さく頷く。言葉より、視線が応える。遥の胸元から、再び香りが立ち上る。夕食の余熱が加わり、より濃厚に。悠の鼻が、微かに動く。息を吸い込むたび、彼女の匂いが肺に染み渡る。甘く、疼くような。控えめな胸の谷間を想像させる、柔らかな湿り気。

 遥は立ち上がり、台所へ皿を運ぶ。腰のラインが、ブラウスに沿って揺れる。悠の目が、背中を追う。彼女の足音が、浴室の方へ遠ざかる。扉が閉まる音。静寂が戻る。

 シャワーの水音が、壁越しに響き始めた。細い水流が、遥の肌を叩く。悠は食卓に残り、耳を澄ます。水音が、彼女の体を想像させる。汗に濡れたブラウスを脱ぎ、控えめな胸を露わに。貧しい膨らみが、水に打たれ、震える。香りが、水に溶け、変化していく。新鮮な、女の肌の匂いへ。

 悠の息が、熱くなる。扉越しに、遥の存在が濃密に迫る。水音が、沈黙を破る唯一のリズム。香りを想像するだけで、体が疼く。遥は気づかぬまま、そこにいる。悠の視線が、虚空を刺す。

 水音が続く中、二人の距離が、静かに近づき始めていた。

(第2話へ続く)