藤堂志乃

主人の滴りに跪く夜(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:自宅の闇に喉を委ねる

 オフィスの余熱を纏ったまま、拓也は美香の車に身を沈めた。平日の深夜、街灯の淡い光がフロントガラスを滑り、雨粒のように零れ落ちる。エンジンの低い唸りが、二人の沈黙を優しく満たす。美香の横顔は、闇に溶け込み、感情を一切表さない。だが、指先がハンドルを握る感触に、抑えられた熱が伝わる。拓也の胸は、オフィスの唾液の残り香で疼き続ける。あの甘いねばり気が、喉奥に染みつき、服従の渇望を掻き立てる。彼女の視線が、時折サイドミラー越しに絡みつく。言葉はない。ただ、互いの息が、車内の空気を重くする。

 美香の自宅は、都心の静かなマンションだった。エレベーターの扉が閉じると、狭い空間に二人の気配が凝縮する。美香の背中が、わずかに揺れ、細い肩のラインがブラウスに浮かぶ。拓也は後ろから彼女を見つめ、心臓の鼓動が耳に響く。鍵が回る音。ドアが開き、室内の闇が迎え入れる。明かりをつけず、ただ月明かりのような街灯の反射だけが、床に淡い影を落とす。リビングは広く、静寂が重く淀む。ソファの革が、かすかに軋む音。美香が鞄を置き、ゆっくりと振り向く。瞳の奥で、何かが蠢く。拓也の膝が、微かに震える。

 「座って」
 美香の声は、低く響く。拓也はソファに腰を下ろし、背もたれに身を預ける。彼女はすぐ傍に立ち、膝を軽く触れさせる。布地の摩擦が、肌を熱くする。視線が絡みつく。オフィスの記憶が、鮮やかに蘇る。あの唾液の熱。舌に絡み、喉を滑り落ちた甘い支配。拓也の内側で、M男の疼きが膨張する。彼女に跪きたい。彼女の滴りを、もっと深く受け止めたい。美香の唇が、わずかに開く。息が漏れ、湿った光沢が闇に浮かぶ。指が、拓也の顎に触れる。ゆっくりと上げさせる。互いの顔が近づく。沈黙の部屋で、息遣いが響く。

 美香の唇が、重なる。柔らかく、熱い。舌が滑り込み、拓也のそれを優しく押さえつける。唾液が、ゆっくりと流れ込む。ねっとりとした熱が、舌先に広がり、喉奥へ染み込む。オフィスより深い。美香の唾液は、まるで蜜のように甘く、粘つく。拓也の喉が、鳴る。飲み込むたび、内側が溶け出す。服従の喜びが、胸を満たす。彼女の舌が、執拗に絡み、唾液を注ぎ続ける。滴りが、唇の端から零れ、顎を伝う。拓也の身体が、熱く震える。心の奥で、何かが決定的に変わる。彼女の支配に、完全に身を委ねる瞬間。M男の自分が、目覚めの極みに達する。

 美香が、唇を離さない。キスは深く、沈黙の中で続く。彼女の唾液が、拓也の口内を満たし、溢れ出す。喉を滑る感触が、甘い疼きを呼び起こす。拓也は抵抗せず、ただ受け止める。奉仕の喜び。彼女の視線が、半開きの瞼越しに射抜く。静かで、芯の強い瞳。内側で激しく蠢く情熱が、拓也の心を溶かす。互いの息が重なり、部屋の空気を熱く染める。美香の指が、拓也の首筋をなぞる。唾液の滴りが、肌に落ち、冷たく熱い軌跡を残す。拓也の胸が、高鳴る。もっと。彼女の滴りを、喉奥まで。全身で受け止めたい。

 ようやく、美香が唇を離した。糸を引く唾液が、二人の間を繋ぐ。彼女の瞳が、深く沈む。感情を表さないが、奥底で渦巻く欲望が、拓也を震わせる。拓也の喉が、唾液の余韻で湿って、息が荒い。美香は静かに立ち上がり、鞄に手を伸ばす。ファスナーの音が、沈黙を裂く。ゆっくりと、何かを取出る。滑らかな感触の玩具。黒く艶やかなディルドが、街灯の光に浮かぶ。彼女の指が、それを優しく握る。視線が、拓也に戻る。静かな支配の予感。拓也の期待が、胸の奥で膨らむ。肌が、熱く疼き始める。次の滴りが、どんな深みを呼ぶのか。心が、震える。

 美香の唇が、わずかに弧を描く。言葉はない。ただ、玩具の表面に、彼女の唾液が零れ落ちる気配。拓也の内側で、服従の渇望が頂点に近づく。この夜の秘密が、さらに深まる予感に、甘い余韻が胸を満たす。

(1987文字)