南條香夜

上司の腕に溶けるコスプレ旅行(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:宴会の夜とコスプレショップの視線

 宴会は穏やかに幕を閉じた。酒の余韻が体を優しく巡り、旅館の廊下を部長と並んで歩く。平日夜の温泉街は静かで、遠くから聞こえる足音と風の音だけが響く。浴衣の裾が肌に擦れ、互いの肩が時折触れ合う距離に、心臓の鼓動が少し速まる。

「美咲さん、部屋に戻る前に、少し散策するか。空気が気持ちいい」

 部長の提案は自然で、拒む理由などない。私は頷き、二人で旅館の外へ。橙色の街灯が照らす通りを、大人の足取りでゆったりと進む。イベントのチラシが頭を離れず、ふと口にする。

「さっきのチラシ、地元のコスプレイベントなんですね。面白そう」

 彼の横顔が、灯りに柔らかく浮かぶ。笑みが広がり、静かな声で応じる。

「そうだな。明日は平日だから空いてるだろう。ショップも近くにあるらしいぞ。興味あるのか?」

 その言葉に、胸が甘くざわつく。信頼できる彼の前で、そんな大胆な姿を想像するだけで、体温が上がる。でも、急がない。この関係は、長年築いた安心感の上に成り立つものだ。

 通りを少し進むと、小さなコスプレショップの灯りが目に入った。イベント直前らしく、遅くまで開いているようだ。ガラス窓に並ぶ衣装が、妖しく輝く。部長が先にドアを開け、私を促す。

「入ってみようか。君に似合いそうなのが、ありそうだ」

 店内は薄暗く、ジャズのBGMが流れ、大人の空間を演出している。棚に並ぶ衣装は、セクシーで洗練されたものばかり。レースのドレス、シースルーのブラウス、タイトなボディスーツ。普段の私とは違う世界に、頰が熱くなる。

 店主の女性が穏やかに迎え、部長が自然に選んでくれる。黒いレースのキャミソールドレス、手触りが滑らかで、肌に優しく寄り添いそうなもの。背中が大胆に開き、胸元が柔らかく強調されるデザイン。

「これなんて、どうだ? 美咲さんの体型にぴったりだろう」

 彼の視線は優しく、信頼に満ちている。私は頷き、試着室へ。カーテンを引くと、鏡に映る自分の姿。浴衣を脱ぎ、下着姿になった肌が、柔らかな照明に照らされる。28歳の体は、仕事の疲れを癒すようにしなやかだ。ドレスを滑らせるように着ると、レースが肌を優しく包み込む。胸の谷間が深く、腰のラインがくっきりと浮かぶ。鏡の中の私は、普段の自分とは違う、甘い誘惑をまとった女性。

 頰が染まり、心臓が静かに高鳴る。この姿を、部長に見せる……? そんな想像が、体を熱くする。カーテンを少し開け、彼の姿を覗く。棚の前で待つ背中が、頼もしい。

「部長、どうでしょう……」

 声をかけると、彼が振り向き、試着室へ近づく。柔らかな視線が、私の全身を優しく撫でるように注がれる。ドレスのレース越しに、肌が熱を帯びる感覚。互いの距離が近く、息づかいが聞こえそうなほど。

「美しいよ、美咲さん。君の曲線が、完璧に引き立つ。自信を持っていい」

 その言葉は、穏やかで深い。視線が胸元に、腰に、ゆっくりと滑る。非難や強引さはなく、ただ純粋な賞賛。長年の信頼が、この視線を安心感に変える。私は鏡越しに自分を見つめ、彼の存在を背後に感じる。体が甘く疼き、膝がわずかに震える。

「ありがとうございます……こんな私、初めてで」

 彼の手が、試着室の縁に軽く触れる。指先が、私の肩に届きそうで届かない距離。空気が温かく、互いの想いが静かに膨らむ。

「買ってみるか。明日のイベントで着てみたら、きっと楽しいぞ。僕も楽しみだ」

 私は頷き、ドレスを購入する。店を出ると、夜風が肌を冷ますのに、体内の熱は消えない。旅館に戻る道中、肩が触れ合い、言葉少なに歩く。部屋の前で別れる間際、彼の視線が再び優しく絡む。

「ゆっくり休めよ。明日が、楽しみだな」

 ドアを閉め、ベッドに腰を下ろす。買ったドレスを広げ、鏡に映る自分を思う。部長の視線が、肌に残る余熱のように疼く。部屋に戻った今、互いの想いが静かに膨らんでいる。このコスプレ姿を、彼に披露する時が来る……。

(第3話へ続く)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━