三条由真

妊婦CAの赤ちゃん甘え逆転(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:ホテルの夜の妊身囁き

 ホテルのロビーは、平日夜の静けさに包まれていた。街灯の光がガラス窓から差し込み、カウンターの照明だけが柔らかく揺れる。チェックインを済ませ、エレベーターで部屋へ上がる間、首筋に残る彼女の息の感触が、肌を熱く疼かせていた。三十五歳のこの体は、ニューハーフとして培った敏感さで、遥の視線をまだ背中に感じ取る。あのフライトの均衡が、地上でどう崩れるのか──その予感が、胸の奥をざわつかせた。

 部屋に入り、スーツを脱ぎ捨てる。窓辺に立ち、外の闇を眺める。雨がぽつぽつと降り始め、ネオンを滲ませる。仕事の疲れを洗い流そうとした矢先、ドアのノックが静かに鳴った。インターホンに映るのは、遥の姿。制服を脱ぎ、ゆったりしたワンピースに着替え、妊身の曲線を優しく包んだ彼女。妊娠七ヶ月の腹部が、布地を穏やかに押し上げている。

「開けていいですか? お客様」

 声はフライト時より柔らかく、しかしあの息づかいを宿す。ドアを開けると、彼女は自然に部屋へ滑り込み、ドアを閉める。湿った髪が頰に張り付き、雨の雫を一滴落とす。視線が絡み、互いの瞳にフライトの記憶が蘇る。主導権の探り合いが、再び始まる気配。

「こんな時間に、どうして」

 僕はソファに腰を下ろし、彼女を促す。言葉は穏やかだが、視線にわずかな圧を込める。彼女は微笑み、妊身を支えながら近づき、隣に座る。距離が近い。腹部の温もりが、空気を震わせる。

「着陸後、あなたの視線が忘れられなくて。ホテルを調べて、来てしまいました。……許してくださいね」

 彼女の指が、僕の膝に軽く触れる。意図的か、無意識か。ワンピースの裾が捲れ上がり、太腿の白さが覗く。僕はグラスにウイスキーを注ぎ、彼女に差し出す。沈黙が落ち、息が混じり合う。

「許すも何も、君が望むなら」

 返事の終わりに、視線を鋭くする。彼女の目が一瞬細まり、唇を湿らせる。主導権の綱引き──僕の言葉が境界を押せば、彼女の体がそれを溶かすように寄り添う。

「実は……赤ちゃんみたいに、甘えたいんです。お腹の重みが、こんな夜に誰かに寄りかかりたくて」

 囁きながら、彼女の妊身が僕の肩に触れる。柔らかな膨らみが、制服越しとは違う生々しい温もりで伝わる。妊娠七ヶ月の曲線は、成熟した女性の体が宿す究極の柔らかさ。彼女の手が僕の胸に置かれ、指先がシャツのボタンを探る。息が熱く、部屋の空気を甘く淀ませる。

 僕は動かず、ただ視線で応じる。彼女の瞳に映るのは、甘えの仮面の下の何か。主導権を握ろうとする微かな揺らぎ。彼女の唇が近づき、耳元で息を漏らす。

「抱きしめて……お腹を、優しく撫でて。赤ちゃんみたいに、甘やかしてほしいの」

 言葉の圧が、僕の肌を震わせる。軽く腕を回し、妊身を抱き寄せる。布地越しに感じる腹部の鼓動──それは、彼女の体温と同期するように僕の脈を速める。指先がワンピースの上から膨らみをなぞる。彼女の息が乱れ、背中がわずかに反る。

「こんなに重たくて、寂しいんです。あなたの手で、溶かして」

 彼女の声が甘く溶け、視線が絡みつく。主導権が揺れる──僕の指が腹部を優しく押せば、彼女の腰がそれを押し返すように密着する。部屋の静寂に、雨音と息づかいだけが響く。平日夜のホテル、大人たちの隠れ家のような空間。外のネオンがカーテンを染め、互いの影を長く伸ばす。

 触れ合いが熱を帯びる。彼女の手が僕の首筋を撫で、唇が頰をかすめる。キスではない、ただの息の交換。妊身の重みが僕の体に預けられ、甘い圧力が積み重なる。僕は彼女の髪を梳き、耳朶に囁く。

「甘えていい。でも、君の目が、何かを隠してる」

 言葉に沈黙が落ちる。彼女の瞳が一瞬、鋭く光る。甘えの仮面が剥がれかける瞬間──主導権の均衡が凍りつく。次の瞬間、彼女の唇が弧を描き、再び溶ける。

「隠してないわ。ただ、あなたに委ねたいだけ」

 指が僕のシャツを剥ぎ、肌に触れる。互いの体温が混じり、視線の綱引きが深まる。彼女の妊身を優しく抱き、腹部に頰を寄せる。柔らかな鼓動が、甘い震えを呼び起こす。軽い触れ合いが、境界を溶かし、熱を煽る。

 しかし、その瞳の奥に、再び鋭い光が宿る。僕の心理的圧に、彼女が息を詰まらせる気配。主導権が、どちらに傾くのか──雨の夜が、その答えを待つ。

 時計の針が深夜を指す頃、彼女の体がわずかに離れる。視線が絡み、言葉を超えた約束が交わされる。

「また、来てもいい? もっと、深く甘えたいの」

 ドアが閉まる音が響き、残るのは肌の熱と、彼女の息の余韻。次に均衡がどう崩れるのか、胸がざわつく。

(第2話 終わり 次話へ続く)