この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。
## 第2話:頰に絡む吐息の湿り気
夜の静寂が、アパートを包む。ベッドのシーツが肌に張りつき、熱を溜め込む。澪さんの部屋から漏れる気配が、扉の隙間を抜け、私の鼻腔を撫でる。あの甘い体臭が、濃く残る。唇の光沢が、瞼の裏で揺れる。湿ったピンク。息を潜め、耳を澄ます。布ずれの音。彼女の体が、ゆっくりと動く気配。私の指が、無意識に首筋を這う。そこに、残る甘い疼き。眠りは遠い。
翌朝、平日。外は曇天で、窓に雨粒がぽつぽつと落ちる。キッチンでコーヒーを淹れる音が、静かに響く。澪さんが現れる。黒いロングTシャツ一枚。裾が太ももの半ばまでしか届かず、肌の白さが朝の薄光に浮かぶ。32歳の脚線美は、しなやかで張り詰めている。彼女の視線が、私の背中に落ちる。言葉はない。コーヒーの香りが混じり、互いの息が空気を震わせる。
カウンターに並ぶマグカップ。二つ。指先が触れそうで触れない距離で、彼女が一つを取る。私の手が、わずかにずれる。だが、指の腹が、彼女の指先に掠める。湿り気。彼女の肌は、朝の汗で微かにしっとりしている。甘い匂いが、指先から立ち上る。唾液の残り香か、体臭と混じったものか。視線を上げると、澪さんの瞳が深く沈む。沈黙が、濃くなる。私の喉が、乾く。指を離さない。互いの熱が、指腹で溶け合う。
昼下がり、リビングのソファ。雨音が窓を叩き、室内を湿らせる。澪さんが本を広げ、私も隣に座る。肩が、触れそう。彼女の吐息が、ページをめくるたび、頰に届く。温かく、湿った空気。甘い。唾液の匂いが、微かに混じる。朝の歯磨きの残りか、それとも唇の内側から滲むものか。視線を落とすと、彼女の唇がわずかに開いている。内側の湿り気が、光を溜め込む。私の息が、重なる。ソファのクッションが、わずかに沈み、距離が縮まる。
彼女の吐息が、頰を撫でる。距離は、息の届くほど。温かさが、肌に染み込む。甘酸っぱい匂い。唾液の粒子が、空気に溶け、私の鼻腔をくすぐる。視線が絡む。言葉はない。ただ、瞳の奥で、何かが揺れる。私の手が、無意識にソファの上で動く。彼女の膝に、指先が触れる。湿り気。彼女の肌が、熱く受け止める。指を滑らせない。止まる。互いの息が、速くなる。沈黙が、張り詰める。
夕暮れ、キッチンで夕食の支度。平日、夜の7時を回る。雨が強まり、街灯の光が窓に滲む。澪さんが隣で野菜を切る。包丁の音が、規則的に響く。彼女の肩が、私の腕に掠める。吐息が、首筋に届く。湿った甘さ。唾液の匂いが、濃く混じる。唇が近い。視線を向けると、彼女の唇が光る。ピンクの縁に、微かな糸が引くような湿り気。私の箸が止まる。指先が、彼女の手に触れる。玉ねぎの汁か、汗か。湿った感触が、指を繋ぐ。
食卓。向かい合わせ。味噌汁の湯気が、息をぼかす。箸を運ぶたび、視線が落ちる。澪さんの唇に。開閉するたび、唾液の光沢が揺れる。甘い匂いが、テーブルを越え、私の頰を撫でる。吐息の距離。彼女の息が、熱く混じる。私の唇が、乾く。無意識に、舌で湿らせる。彼女の瞳が、それを見つめる。沈黙の中で、空気が甘く重くなる。箸の音だけが、響く。
皿を片付けるシンク前。背中合わせ。水音が、息を隠す。澪さんの体臭が、後ろから包む。甘い霧。振り返ると、彼女の顔が近い。吐息が、頰を直に撫でる。湿り気。唾液の甘い匂いが、鼻腔を満たす。視線が沈む。唇が、わずかに近づく。触れそう。私の手が、彼女の腰に回る。血のつながりなどない、この関係。指先が、Tシャツの裾を掠める。肌の熱。彼女の吐息が、深くなる。合意の気配が、静かに広がる。
夜が深まる。各自の部屋。だが、扉は開いたまま。ベッドに横たわり、目を閉じる。眠れない。澪さんの気配が、廊下を抜け、耳元に忍び寄る。息づかい。布ずれの音が、近づく。足音はない。ただ、気配。私の心臓が、鳴る。扉の隙間から、吐息が届く。温かく、湿った。甘い唾液の匂い。体が、熱くなる。
突然、気配が濃くなる。澪さんが、部屋に入る。言葉はない。ベッドの端に腰掛ける。視線が絡む。月明かりが、彼女の唇を照らす。湿った光沢。私の頰に、吐息が落ちる。距離は、唇の触れそうなほど。息が混じる。甘い。唾液の粒子が、空気に溶け、肌を撫でる。手が伸びる。互いの指先が、触れ合う。湿り気。ゆっくりと、唇が近づく。
触れる。柔らかく、湿った感触。澪さんの唇が、私の唇に重なる。微かな圧。唾液の甘い味が、口内に広がる。舌が、わずかに触れ、糸を引く。透明な糸が、唇の間で揺れる。視線は閉じない。瞳の奥で、合意が静かに灯る。息が熱く絡み、匂いが全身を包む。甘い疼きが、肌の奥に沈む。離れる。糸が、ぷつりと切れる。沈黙が、戻る。彼女の吐息が、頰を残す。
澪さんが立ち去る。扉が、静かに閉まる。ベッドに残る、湿った熱。唾液の残香が、唇に絡む。肌の奥が、疼き求める。次に、何が起こるのか。沈黙の向こうで、関係がさらに傾く予感が、甘く胸を締めつける。
(2012文字)