緋雨

夫の前で熟れる妻の視線檻(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:夫の談笑に忍び寄る視線

 雨の音が、窓ガラスを細やかに叩いていた。平日の夕暮れ、街灯の淡い光がリビングに差し込み、部屋を柔らかな灰色に染めている。美佐子は42歳。夫の健一(48歳)の帰宅を待つだけの、いつもの時間を過ごしていた。キッチンで湯気を立てるお茶の準備を終え、ソファに腰を下ろす。静かな室内に、時計の針が刻む音だけが響く。

 インターホンが鳴ったのは、それから間もなくのことだった。健一の声が玄関から聞こえてくる。「おう、浩太か。入ってくれよ、ちょうどいいタイミングだ」。

 浩太。夫の後輩で、35歳の男。会社で健一の部下だった頃からの付き合いが、今も続いている。美佐子は立ち上がり、玄関へ向かう。ドアが開き、浩太の姿が雨に濡れたコートを羽織って現れた。背が高く、肩幅の広い体躯。濡れた髪が額に張り付き、鋭い眼差しが一瞬、美佐子を捉える。

「こんばんは、美佐子さん。お邪魔します」。

 浩太の声は低く、抑揚が少ない。美佐子は軽く会釈を返し、ハンガーにコートを預ける。血のつながらない、ただの夫の知人。それ以上でも以下でもないはずの男が、今日に限って空気を微かに重くする。なぜだろう。視線か。玄関の薄明かりの下で、浩太の目が美佐子の首筋を滑るように通り過ぎた気がした。

 リビングに戻ると、健一はすでにソファに腰掛け、ビールの缶を手にしていた。「浩太、座れよ。美佐子、お茶出してくれ」。

 美佐子はトレイに湯呑みを乗せ、テーブルに置く。夫と浩太の二人は、仕事の話を始めていた。健一の笑い声が部屋に響く中、美佐子は夫の隣に控えめに座る。ワンピースの裾が膝を覆い、素足にスリッパを履いただけの、いつもの姿。42歳の体は、柔らかく熟れた曲線を保ちながら、静かな気品を湛えている。

 話はプロジェクトの進捗に移っていた。健一が身を乗り出して語る。「あの契約、浩太のおかげで決まったよな。よくやった」。

 浩太は頷き、口元に薄い笑みを浮かべる。その視線が、ふと美佐子の胸元へ落ちた。ワンピースのVネックから覗く、鎖骨のライン。白い肌が、部屋の灯りに照らされて柔らかく輝く。浩太の目は動かない。執拗に、そこに留まる。美佐子は息を潜め、視線を感じ取る。肌が、じわりと熱を帯び始めた。

 夫は気づかない。ビールを煽り、話を続ける。「次はもっとデカいのが来るぞ。浩太、期待してるからな」。

 浩太の視線は、次に美佐子の脚へ移る。ソファに座った姿勢で、膝が僅かに開き、裾が滑り上がった隙間から、細く引き締まったふくらはぎの曲線が露わになる。浩太の目が、ゆっくりと這うように辿る。まるで、指でなぞるかのように。美佐子は膝を揃え直すが、遅い。視線はすでに、脚の奥深くまで染み入っていた。

 息が、微かに乱れる。美佐子の胸が、浅く上下する。夫のすぐ隣で、浩太の視線に晒される羞恥。言葉はない。ただ、沈黙の中で、空気が張り詰める。浩太の瞳は黒く、底知れぬ深さを湛え、美佐子の肌を熱く焦がす。彼女の首筋に、薄い汗が浮かぶ。内腿が、勝手に震え始めた。

 健一が立ち上がり、キッチンへ向かう。「つまみ、持ってこいよ。浩太、待ってろ」。

 二人きりになった瞬間、浩太の視線がより濃く、濃密になる。美佐子の胸を、腰を、脚を、順に舐め回すように。美佐子は目を伏せ、指先でスカートの裾を握りしめる。体が熱い。肌の奥から、甘い疼きが湧き上がる。夫の足音が近づき、浩太は視線を逸らす。健一が皿を置き、再び話が弾む。

 時間が過ぎる。雨音が強まり、窓辺に水滴が列をなす。浩太の視線は、隙あらば美佐子を捉え続ける。夫の笑い声が被さる中、彼女の息は浅く、熱く乱れていく。胸の頂が、布地に擦れて疼く。脚の内側が、湿り気を帯び始める。言葉を交わさない。視線だけが、静かな檻を築く。

 夜が深まった。浩太が帰る頃、玄関でコートを羽織る。「お邪魔しました、美佐子さん。また来ます」。

 その言葉に、視線が最後に絡みつく。美佐子は頷くのみ。ドアが閉まり、静寂が戻る。健一は欠伸をし、「いい奴だよな、浩太は」と呟く。風呂に入り、布団に潜る時間。夫の寝息が規則正しく響く中、美佐子は目を閉じる。

 しかし、眠れない。浩太の視線が、脳裏に焼き付いて離れない。胸元を這う感触。脚を撫でるような熱。夫の隣で晒された羞恥が、下腹部に甘い疼きを広げていく。指先が、無意識にシーツを握る。息が熱く、肌が火照る。静かな夜に、抑えきれぬ震えが、ゆっくりと体を蝕む。

 この視線は、いつまで続くのだろう。次に浩太が来る時、何が起こるのか。美佐子の唇が、微かに開く。余韻の熱が、夜の闇に溶けていく。

(1987文字)