如月澪

壁越しの熟女の秘め息(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:薄壁の吐息

 新しいアパートの鍵を回した瞬間、拓也は深いため息を漏らした。28歳、独身。長年勤め上げた会社を辞め、フリーランスの道を選んで半年。ようやく見つけたこの静かな一室は、都会の喧騒から少し離れた、平日でもひっそりとした住宅街にあった。夕暮れの薄闇が窓辺を染め、引っ越し業者の足音が遠ざかると、ようやく一人きりの静寂が訪れた。

 荷解きを終え、キッチンでインスタントの味噌汁を啜っていると、インターホンが鳴った。画面に映るのは、柔らかな笑みを浮かべた女性。ドアを開けると、彼女は小さな紙袋を差し出してきた。

「こんにちは。新しくお引っ越しされた方ですね? 私、隣の203号、美咲っていいます。35歳の独り暮らしで……何かお手伝いできることあったら、いつでも声かけてくださいね」

 美咲の声は穏やかで、どこか包み込むような温かさがあった。肩まで伸びた黒髪を軽く耳にかけ、ゆったりとしたニットに包まれた体躯は、熟れた果実のように柔らかく豊満。目が合うと、ふわりと優しい視線が拓也を捉え、思わず胸がざわついた。お姉さん、という言葉がぴったりくるタイプだ。世話焼きで、近所付き合いを大切にする人柄が、第一声から伝わってきた。

「ありがとうございます。拓也です。28歳で、こっちも一人暮らしです。まだ慣れなくて……何かとご迷惑かけそうです」

 そう返事しながら、紙袋を受け取ると、中には手作りのクッキーとメモが入っていた。「甘いもの好きかなと思って。ゆっくり休んでね」。その気遣いが、引っ越しの疲れを溶かすようだった。二人は玄関先で少し立ち話。美咲は近所のスーパーの場所や、ゴミ出しのルールを教えてくれた。彼女の話し方はゆったりとして、言葉の端々に相手を思いやるニュアンスが滲む。笑うたび、胸元がわずかに揺れ、拓也は視線を逸らすのに苦労した。

 それから数日、日常の挨拶が自然に交わされるようになった。朝のエレベーターで顔を合わせれば、「おはよう。今日もお仕事?」と美咲が声をかける。彼女は近くのオフィスで事務の仕事をしているらしい。夕方、帰宅すると廊下で鉢合わせ、「夕飯何作ろうかな……拓也さんも何か食べたいものあったら言ってね」と、冗談めかして笑う。世話焼きなお姉さんぶりが、拓也の孤独を優しく埋めてくれた。血のつながらない、ただの隣人。それなのに、彼女の存在は新居を少しずつ温かく変えていく。

 ある雨の夜だった。平日、時計の針は11時を回っていた。拓也はベッドに横になり、スマホを弄りながら眠気を待っていた。アパートの壁は薄く、隣室の気配が時折伝わってくる。普段は物音一つしない美咲の部屋だが、その夜は違った。

 最初は、かすかな息づかい。静かな部屋に、微かな吐息が壁越しに響いてきた。規則正しく、抑え気味の……しかし、徐々に熱を帯びていく。ふう……ふう……。拓也の耳がぴくりと反応した。続いて、ベッドの軋み。きし、きし、という小さな音が、雨音に混じって聞こえてくる。彼女の部屋だ。間違いない。

 想像が膨らむのを、止められなかった。美咲の姿が、脳裏に浮かぶ。ゆったりとしたニットの下、熟れた体躯がシーツに沈み、指先がゆっくりと肌を這う。息が乱れ、吐息が漏れる。優しく世話焼きなお姉さんが、独りで秘めやかな時間を過ごしている。壁一枚隔てた向こうで、彼女の体が熱く疼き、微かな湿り気を帯びていく様子が、音だけで鮮やかに蘇る。

 拓也の体が、熱くなった。下腹部に疼きが走り、心臓の鼓動が速まる。手が自然にズボンの中へ滑り込み、自身を握る。固く張りつめたそれを、ゆっくりと扱き始める。壁越しの吐息に合わせるように、自分の息も荒くなる。美咲の軋むベッドの音が、彼女の指の動きを想像させる。きし……ふう……。彼女の唇から零れる微かな声が、拓也の興奮を煽る。もっと聞きたい。もっと近くで。

 指の動きが速まる。自身の先端から、熱い蜜が滲み、滑りを良くする。美咲の吐息が頂点に近づく気配。軋みが激しくなり、息が途切れ途切れに。拓也も限界だった。体が震え、腰が浮く。びくん、と脈打つ感覚が爆発し、白濁が腹に飛び散る。静寂が戻るまで、荒い息を潜めていた。

 翌朝、エレベーターで美咲と顔を合わせた。いつもの優しい笑み。「おはよう、拓也さん。よく眠れた?」その視線が、いつもより少し長い気がした。頰に薄い紅が差しているのも、気のせいか。彼女の瞳に、微かな揺らぎが宿っている。壁越しの夜の記憶が、二人の間に淡い緊張を残す。今日も、穏やかな挨拶を交わしたが、拓也の胸はざわついていた。あの吐息の主が、こんなにも近くにいる。

 今夜も、聞こえてくるのだろうか。いや、それ以上に……彼女の視線が、何かを知っているように感じて。

(第1話 終わり 約2050字)

※次話へ続く