白坂透子

上司の吐息に溶ける淫らな蜜(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:残業の夜に忍び寄る甘い疼き

オフィスの窓辺に、街灯の淡い光が差し込んでいた。平日の夜遅く、社内はひっそりと静まり返り、キーボードの音だけが時折響く。28歳の私、佐藤美咲はデスクに座り、モニターの青白い光に目を細めていた。今日も残業だ。締め切りが迫るプロジェクトの資料をまとめていると、背後から穏やかな足音が近づいてきた。

「美咲さん、まだ終わらないの?」

声の主は、私の上司である42歳の黒田浩司課長だった。背の高い体躯に、落ち着いたスーツ姿。入社以来、彼の指導はいつも優しく、理知的で、私の仕事に確かな自信を与えてくれる。信頼できる人だ。ただの同僚として、数年を共に過ごしてきた。

「はい、課長。もう少しで……」

私は振り返り、微笑んだ。彼は私の隣の椅子を引き寄せ、自然に座る。肩が触れそうな距離で、資料を覗き込む。その視線は温かく、決して威圧的ではない。むしろ、心の奥を優しく撫でるような安心感があった。

「ここ、数字の整合性が少しずれているね。こう直してみたらどうかな」

彼の指が画面を指し、静かにアドバイスをくれる。言葉の一つ一つが、丁寧で思いやり深い。残業続きの疲れた私の心に、じんわりと染み込んでいく。私は頷き、修正を加えていく。時折、彼の息づかいが耳元に届き、かすかな温もりが肌をくすぐる。オフィスの空調が効いた部屋で、それだけが柔らかな熱のように感じられた。

作業が進むにつれ、自然と会話が弾むようになった。仕事の話から、最近の休日の過ごし方へ。浩司課長は独身で、週末はワインを片手に本を読むのが好きだと言う。私はそれを聞きながら、ふと彼の横顔を見つめた。整った輪郭、わずかに刻まれた皺が、男らしい深みを湛えている。視線が絡み、互いに気づいた瞬間、軽く目を逸らす。でも、その一瞬の沈黙が、心地よい余韻を残した。

「美咲さん、君の集中力は本当に素晴らしいよ。僕も見習わないと」

彼の言葉に、私は頰が熱くなるのを感じた。褒められるのは慣れているはずなのに、今日は違う。心の奥底で、何かが静かに動き始めたようだ。資料がようやく完成し、時計は午後十時を回っていた。

「これで大丈夫ですね。お疲れ様です、課長」

私は立ち上がり、軽く頭を下げる。彼も立ち上がり、ジャケットを羽織る。その動作一つ一つが、洗練されていて、惹きつけられる。

「うん、お疲れ様。……ところで、美咲さん」

彼の声が、少し低くなった。意外な響きに、私は足を止めた。浩司課長は窓辺に寄り、夜の街を見下ろしながら続ける。

「明日、仕事が一段落したら、僕の部屋で少し酒でも飲みながら話さないか? 君の最近の悩み、もっと聞かせてほしいんだ。信頼できる部下として、ね」

その言葉は、穏やかだが、どこか甘い誘惑を帯びていた。部屋で酒を……。上司として当然の気遣いか、それとも? 心臓の鼓動が静かに速まる。私は少し戸惑いつつも、頷いた。

「ええ、ぜひ。お言葉に甘えさせていただきます」

彼の唇に、柔らかな笑みが浮かぶ。その視線が、再び私を捉え、離さない。オフィスの扉を閉め、別れ際の挨拶を交わす頃には、空気の中に微かな緊張が漂っていた。

家路につく電車の中で、私は窓ガラスに映る自分の顔を見つめた。頰が上気し、息が少し乱れている。マンションの自室に着き、シャワーを浴びてベッドに横になると、ようやく身体が弛緩した。でも、眠りは訪れなかった。

浩司課長の吐息を、耳元に思い浮かべる。あの残業中の近さ、絡みつく視線。指先が資料をなぞる仕草さえ、なぜか官能的に蘇る。私の手が、無意識に首筋を滑り、胸元へ。柔らかな肌が、甘く疼き始めた。息が熱くなり、下腹部に温かな波が広がる。普段は抑えていた、内に秘めた欲求が、静かに目を覚ましつつある。

「あの人の前で、こんな私を見せたら……」

想像が膨らみ、指がスカートの裾をまくり上げる。蜜のような湿り気が、秘部を優しく濡らす。浩司課長の部屋で、酒を酌み交わす明日。信頼の会話が、どんな深みに導くのか。身体の芯が、甘く溶けゆく予感に震えた。

翌日の約束が、私の夜を優しい熱で満たしていく……。

(第1話 終わり 約1950字)

※次話へ続く