緋雨

主人の視線に蕩ける男の娘メイド(第1話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第1話:静かな屋敷の視線が肌を疼かせる

 雨の残る夕暮れ、街灯の淡い光が窓辺を濡らす頃、悠は古い屋敷の玄関で膝をついた。二十五歳の彼は、男の娘としてこの仕事に就いた。細い肩に黒いメイド服が滑らかに落ち、裾が膝上を優しく覆う。鏡に映る自分の姿は、柔らかな頰と長い睫毛が織りなす儚さで、男であることを微かに隠していた。雇い主の主人は、血縁などない、ただの雇い主。静かな視線で悠を迎え入れた男だった。

 屋敷は街外れの丘に佇み、夕暮れの静寂が重く淀む。風が木々を揺らし、遠くの街灯がぼんやりと滲むだけ。悠は埃を払う羽箒を手に、長い廊下を進んだ。足音が絨毯に吸い込まれ、沈黙が肌にまとわりつく。雇われて三日目。主人の気配はいつも遠く、しかしどこかで息を潜めているようだった。

 居間で掃除を始めると、背後に視線を感じた。振り返らずともわかる。主人の書斎の扉が僅かに開き、そこから淡い光が漏れる。悠は腰を屈め、棚の下を拭く。メイド服の布地が太腿に張り付き、息が微かに深くなる。視線は悠の首筋を滑り、肩のラインをなぞるように留まる。言葉はない。ただ、沈黙の中で空気が重く張り詰める。

 悠の指先が震えた。羽箒の柄を握る手に、甘い疼きが伝う。男の娘として生まれた身体は、こうした視線に敏感だ。胸の奥で熱が灯り、下腹部に微かな脈動が走る。主人の視線は冷たくもなく、熱くもなく、ただ深く沈む。悠はゆっくりと立ち上がり、埃を払う仕草で袖を整えた。その瞬間、視線がメイド服の襟元に落ちる。肌がざわめき、息が僅かに乱れた。

 夕刻が深まる。屋敷の空気は雨の湿気を帯び、静寂がさらに濃くなる。悠は銀のトレイに紅茶を用意し、書斎へと向かった。扉をノックする手が、僅かに湿る。主人の声が低く響く。「入れ」。

 書斎は薄暗く、窓辺にランプの光が揺れる。主人は革張りの椅子に腰掛け、本から目を上げた。四十代半ばの男、端正な顔立ちに灰色の瞳。悠はトレイを机に置き、静かに頭を下げる。視線が再び絡みつく。今度はより近く、息づかいが聞こえる距離だ。悠の膝が微かに震え、メイド服の下で肌が熱を持つ。

 「ありがとう」主人の声は穏やかで、視線は悠の唇に留まる。悠は返事をせず、ただ視線を落とす。沈黙が部屋を満たし、空気が甘く淀む。主人の指が本のページをめくる音が、悠の耳に響く。その指先が、机の上で僅かに動き、悠の袖の端に近づくように見えた。触れそうで触れない距離。悠の息が止まり、内面に緊張の熱が灯る。肌が甘く疼き、秘めた部分が微かに疼き始める。

 視線が深まる中、悠はトレイを手に後ずさる。主人の瞳が、悠の腰の曲線を追う。言葉はない。ただ、沈黙の糸が二人を繋ぎ、わずかな傾きが生まれる。屋敷の静けさが、悠の身体を甘く蝕む。指先が袖に触れそうに、近づいていた。

(第1話 終わり 約1980字)

次話へ続く。主人の指先が悠の袖に触れそうに。