久我涼一

隣室秘書妻の揺らぐ視線(第3話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第3話:部屋訪問の熱息、開かれたドア

 平日の朝、オフィスは曇天の光が窓を淡く染め、重い空気が漂っていた。俺はデスクで出張の準備資料をまとめ、彩乃の席をちらりと見る。彼女はすでに俺のスケジュールをプリントアウトし、ファイルにまとめている。ブラウスが首筋に沿い、動きごとに淡い影が揺れる。昨夜の壁越しのため息が、耳の奥に残っていた。

「おはようございます、課長。出張の資料、こちらです。航空券とホテルの予約も確認済みです」

 彩乃が立ち上がり、ファイルを差し出す。指先が俺の手に触れ、温もりが一瞬伝わる。視線が絡み、彼女の瞳に深みが宿る。オフィスの喧騒の中で、この微かな接触が熱を呼び起こす。俺は頷き、受け取りながら声を低くした。

「ありがとう。完璧だ。助かるよ」

 彼女の指輪が光り、人妻の現実を刻む。だが、その光が今は抑えきれない疼きを煽るようだった。午前中のミーティングで、彩乃は俺の隣に座り、資料を共有する。膝が軽く触れ合い、離れない。彼女の息が近く、フローラルの香りが混じる。視線を交わすたび、互いの瞳に言葉なき熱が宿る。

 昼過ぎ、上司から追加の書類を渡すよう指示が出た。出張先のクライアント資料で、急ぎのものだ。彩乃に連絡すると、夫の不在のため自宅に忘れたものがあると返事。俺は了承し、夕方の帰宅後にマンションで渡す約束をした。オフィスの残り時間、視線交換が密かになる。デスク越しに目が合い、すぐに逸らす。肩の記憶、溜息の響きが、距離を溶かす。

 夕暮れの帰宅路、雨上がりの街灯がアスファルトを濡らし、足音が静かに響く。マンションの廊下は人影なく、俺の部屋の前に立つ。隣室のドアをノックすると、すぐに彩乃の声がした。

「佐藤課長、いらっしゃいませ。どうぞ」

 ドアが開き、彼女の姿。部屋着の薄いカーディガンにスラックス、髪を無造作にまとめている。室内は柔らかな照明が灯り、ソファに書類が広げられている。夫の不在が、空間に淡い空白を生む。彩乃は俺を招き入れ、コーヒーを淹れてくれる。

「夫は今週末まで地方です。書類、こちらでお預かりします。出張、大丈夫ですか」

 ソファに並んで座り、資料を広げる。膝が近く、彼女の体温が空気に溶ける。俺はファイルを渡し、指先が触れ合う。さりげない手触りなのに、互いの息が熱を帯びる。彩乃の瞳が俺を捉え、わずかに潤む。

「課長……最近、視線が気になります。オフィスで、ベランダで」

 言葉が途切れ、彼女の手が俺の膝に落ちる。軽く、だが意図的に。俺の胸がざわつき、手を重ねた。細い指、温かな脈動。夫のいない部屋で、この距離。責任の重さと、抑えきれない衝動が体を震わせる。

「俺もだ。彩乃さん、あなたの気配が、壁越しにまで染みてくる」

 視線が絡み、唇が近づく。ゆっくり、互いの息が混ざる。キスは柔らかく、最初は探るように。彼女の唇が熱く、舌先が触れ合うと、体が震えた。彩乃のため息が漏れ、手が俺の背に回る。カーディガンがずれ、ブラウス越しに胸の膨らみが感じられる。俺の手が腰に滑り、布地の下の曲線をなぞる。

 ソファに体を預け、互いの熱が重なる。彼女の首筋に唇を寄せ、淡く吸う。彩乃の体がびくりと反応し、低い喘ぎが漏れる。指が俺のシャツを掴み、肌が露わになる。ブラのホックを外し、柔らかな胸に触れる。頂が硬く尖り、掌に収まる感触。彼女の息が荒くなり、腰が俺に押しつけられる。

「課長……あっ、そこ……」

 彩乃の声が震え、手が俺のベルトに伸びる。ズボンを緩め、熱く硬くなった部分を握る。ゆっくりと上下に動かし、俺の息を乱す。互いの動きが激しくなり、彼女のスラックスを下ろす。ショーツ越しに湿り気を感じ、指を滑らせる。彩乃の体が弓なりに反り、強い痙攣が走る。唇を塞ぎ、頂点の波を共有する。彼女の瞳が潤み、頰が紅潮する。

 だが、そこまで。息を整え、互いの体を離す。彩乃の指が俺の胸を撫で、瞳に決意が宿る。人妻の指輪が、照明に光る。背徳の重さが、甘い余韻を深める。

「夫が帰るまで……この距離、持つでしょうか」

 俺は彼女を抱き寄せ、耳元で囁く。

「出張から戻ったら、ゆっくり話そう。夫が出張中の夜、ここで待っていてくれ」

 彩乃は頷き、唇を重ねる。約束のキス、短く熱く。俺は部屋を出る。廊下の静けさで、体が熱く疼く。

 翌日以降、職場での視線がより濃密になる。資料を渡す指先、残業の肩触れが、昨夜の記憶を呼び起こす。ベランダで目が合い、微笑む。壁一枚の隣室が、欲望の巣窟のように感じられる。夜の溜息が、再び聞こえるようになった。

 出張前夜、帰宅すると彩乃のドアが僅かに開いたままだった。室内の灯りが廊下に漏れ、彼女のシルエットが揺れる。招くように、静かな隙間。俺の足が止まり、心臓が高鳴る。このドアが、日常の果てに何を生むのか。

(第3話 終わり)

(約1980字)