久我涼一

癒しの女王に妻の肌を委ねて(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:妻の溶けた余韻と預ける想像の疼き

 美咲の体温が膝に伝わり、俺の指先が自然と彼女の髪を梳く。室内のランプが柔らかく二人の影を落とし、窓辺から忍び込む夜風がカーテンを微かに揺らす。平日の夜、アパートの静寂が、妻の浅い息づかいを際立たせていた。彼女の首筋に残るオイルの甘い香りが、俺の鼻腔をくすぐる。麗子の手が、こんなにも妻を変えるとは。

「もっと、話してみて。どんな感じだったんだ?」

 俺の声は低く抑え、妻の反応を窺う。美咲は目を細め、ソファに体を沈めながら、ゆっくりと語り始めた。瞳が潤み、頰に残る上気は施術の余熱のようだ。普段の穏やかな彼女が、こんなにも緩みきっている姿に、胸の奥がざわつく。

「最初は肩からよ。麗子さんの指が、オイルを塗り込んでくるの。温かくて、滑らかで……筋肉の奥まで、じんわり溶かされていくみたい。痛くないの。ただ、力が抜けていくの。『ここ、溜め込んでるわね。全部、私に預けて』って、耳元で囁かれて……体が勝手に従っちゃうのよ」

 美咲の声は甘く掠れ、語るたびに唇が微かに開く。彼女の手が俺の膝を握り、指先が震える。俺は息を潜め、想像を重ねる。麗子のしなやかな指が、妻の白い肌を這う様子。肩から背中へ、腰のくぼみへ、そして……。日常の妻が、そんな手に委ねられる。密かな興奮が、下腹部に熱を灯す。

「それで? 続けて」

 促す俺の声に、美咲は体を寄せ、首を俺の胸に擦りつける。彼女の息が熱く、肌が火照っているのが分かる。普段のマッサージとは違う、深い余韻。麗子の手技が、妻の心身を高揚させたのだ。

「背中をほぐされたあと、うつ伏せになって……太腿の内側まで。優しく圧をかけられて、足の先まで温もりが広がるの。体が浮くみたいで、頭の中が真っ白になって。麗子さん、ずっと微笑んでるのよ。『あなた、感じやすい体ね。次は特別コースで、もっと深く癒してあげるわ。心まで委ねて、いい?』って……」

 その言葉を繰り返す妻の瞳が、遠くを眺めるように潤む。頰が再び熱く染まり、俺の腕にしがみつく。特別コース。麗子の低く甘い声が、妻の耳に残っているのだろう。美咲の体は今もその記憶に震え、俺の膝で微かに身をよじる。彼女の変化が、俺を捉えて離さない。穏やかな妻が、こんなにも甘く乱れるなんて。

「へえ……特別コース、か。面白そうだな。お前、楽しみにしてる顔だぞ」

 俺は軽く笑って誤魔化すが、心臓の鼓動が速まる。美咲は頷き、俺の首に腕を回す。唇が耳元に近づき、吐息が絡む。

「うん……楽しみ。麗子さんの手、健一さんのとは違うの。もっと、深いところに届くみたい。全部預けたくなるのよ。あなたも、知ってるでしょ? あの感覚」

 妻の言葉が、俺の胸を刺す。あのサロンでの記憶が蘇る。麗子の指の圧、耳元の囁き。妻がそれを味わい、今も余韻に浸っている。俺は彼女を抱き寄せ、背中を撫でる。柔らかな肌の下に、微かな震えを感じる。興奮が、ゆっくりと膨らむ。妻の体を、麗子に預ける想像。彼女の微笑みの下で、美咲が溶けていく姿。日常の安らぎが、そんな方向へ傾く。

 その夜、夕食後のワインを傾けながら、二人はベッドに並んだ。美咲は俺の胸に頭を預け、施術の詳細をさらに零す。オイルの滑り、指の深さ、息づかいの近さ。語る妻の声が甘く、瞳が俺を誘うように輝く。俺は彼女の腰を抱き、ゆっくりと肌を確かめる。いつもより熱い。麗子の手が残した痕跡のように。

「健一さん、次も行っていい? 特別コース、予約しちゃったわ。平日夜よ。一緒にどう? でも、まずは私だけで……」

 美咲の提案に、俺は頷く。内心、想像が止まらない。妻がサロンへ向かう姿、麗子の個室で横たわる美咲。女王のような微笑みに導かれ、心身を委ねる。帰宅後の彼女の表情が、もっと深く変わるだろうか。俺はそれを、密かに見届けたい衝動に駆られる。寝取られるような、預けるような疼き。夫婦の関係が、ゆっくりと揺らぎ始める。

 翌日、仕事の合間に俺の頭を占めるのは、そればかりだった。現場の喧騒を抜け、昼休みの路地で煙草をくゆらす。妻の潤んだ瞳、熱く染まる頰。麗子の「もっと深く」という誘い。美咲を、あの手に預ける想像が、胸を締めつける。興奮と、微かな不安の混じった熱。日常の延長線上で、そんな欲望が膨らむ。

 数日後、美咲の二回目の予約日が近づく。平日の夕暮れ、俺は早めに帰宅し、妻の支度を手伝う。彼女は淡い色のワンピースをまとい、鏡の前で髪を整える。いつもより丁寧に。瞳に期待の光が宿る。

「麗子さん、待ってるって。『前回より深く、癒しますね』ってメッセージが来たの。ドキドキするわ」

 美咲の頰がまた染まる。俺は彼女の肩に手を置き、軽くキスを落とす。

「行ってこい。詳しく聞かせてくれよ、後で」

 玄関で見送る俺の視線に、妻は微笑み返す。ドアが閉まり、足音が遠ざかる。夜の静寂がアパートを包む中、俺はソファに座り、想像に囚われる。麗子の手が、妻の肌を這う。甘い支配が、美咲を溶かす。帰宅後の彼女は、どんな表情を見せるのか。預ける想像が、体を熱くする。この疼きは、夫婦の新たな扉を開く予感を伴っていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━