篠原美琴

ストッキングに絡む秘めた唇(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:膝に忍び寄る手の影

 遥の心臓が、激しく鳴り続けていた。キッチンのカウンターに寄りかかる綾乃の、視線はなおも遥の股間に留まったまま。朝の光が窓から差し込み、コーヒーの湯気が細く立ち上る。綾乃の黒いストッキングを履いた脚が、カウンターの下でわずかに交差する。ナイロンの擦れる音が、かすかに響いた。遥はカップを握る手に力を入れ、視線を逸らした。喉が、乾く。

 綾乃はゆっくりと視線を上げ、遥の顔に合わせた。言葉はない。ただ、唇の端が、ほんのわずかに緩む。微笑みとも、別の何ともつかない揺らぎ。彼女はコーヒーを一口啜り、カウンターから離れた。足音がリビングへ移る。遥は息を吐き、ようやく体を動かした。仕事へ向かう支度を済ませ、アパートを出る頃、外は曇天に覆われていた。平日の朝、街は静かだ。オフィス街の路地を抜け、遥の足取りは重かった。昨夜の疼きが、未だ下腹部に残る。綾乃の視線が、脳裏に焼きつく。

 一日が過ぎた。デスクワークの合間、遥の視界に黒いストッキングがよぎった。資料の影に、ナイロンの光沢。足首の曲線。集中できなかった。昼休み、窓辺で煙草を吸う同僚たちの話し声が遠く、遥は独り息を潜めた。下半身の秘密が、熱を持つ。ふたなりの膨らみが、ズボンの内側で疼きを訴える。抑えろ、と自分に言い聞かせる。だが、綾乃の瞳が、離れない。

 夕刻、遥はアパートに戻った。雨がぱらつき始め、街灯が早めに灯る。ドアを開けると、リビングに綾乃の姿。ソファに腰掛け、雑誌をめくる彼女の脚が、遥の目を捉える。黒ストッキングは今日も完璧に張りつめ、膝の裏に淡い影を落とす。スカートの裾がわずかにずれ、ストッキングの縁が覗く。綾乃は気づいたように視線を上げ、遥を迎えた。静かに立ち上がり、キッチンへ向かう。夕食の準備だ。

 二人は再びダイニングテーブルを挟んで座る。今日のメニューはグリルした魚と野菜。フォークの音が、雨音に混じる。言葉は少ない。遥の仕事の愚痴を、綾乃が穏やかに聞く。「疲れたのね」。それだけ。視線が交わるたび、遥の胸がざわつく。テーブルの下、足を揃える。昨夜の接触を思い出し、体が強張る。綾乃の足先は、今日は動かない。ただ、そこに在る。

 食事が終わり、片付けを終える。リビングの灯りが柔らかく灯る中、綾乃がソファに座り直した。遥も隣のスペースに腰を下ろす。沈黙が広がる。テレビの音もない。外の雨が、窓を叩く。綾乃の指が、雑誌のページを止める。彼女の脚が、わずかに動いた。ストッキングの表面を、指先でなぞる仕草。膝下から足首へ、ゆっくりと。ナイロンが光を反射し、指の腹に沿って微かな皺が生じる。遥の喉が、鳴った。ごくり、という音が、自分の耳に響く。

 綾乃は仕草を止めず、視線を遥に向けた。瞳に、朝と同じ光。遥の心が揺らぐ。なぜ、こんなに熱いのか。ストッキングを直すその手つきが、遥の下腹部を刺激する。膨らみが、疼き始める。息が浅くなる。距離は、ソファのクッション一つ分。触れそうで、触れない。綾乃の指が、ストッキングの裾を整える。ふくらはぎの筋が、わずかに浮く。遥は視線を落とせない。喉が、再び鳴る。

 沈黙が、重くのしかかる。綾乃の息が、聞こえるほど近く。遥の膝が、微かに震える。すると、綾乃の手が動いた。ソファの上で、ゆっくりと遥の方へ。指先が、遥の膝に落ちる。軽く、触れる。ストッキングを纏っていない遥の膝に、綾乃の指の温もり。爪の感触が、布地越しに伝わる。遥の体が、硬直した。息が、止まる。

 綾乃の手は、動かない。ただ、そこに留まる。遥の膝の内側、わずかに圧を加える。熱い。柔らかい。遥の秘部が、反応する。下腹部の膨らみが、熱く脈打つ。ズボンの内側で、硬くなり始める。息が、重なる。二人の吐息が、リビングの空気に溶け合う。綾乃の視線が、遥の顔を捉え、離さない。瞳の奥に、かすかな問い。遥は答えられない。ただ、膝に置かれた手を感じ、体が震える。触れられない距離が、逆に熱を煽る。

 どれほどの時が過ぎたか。綾乃の手が、ゆっくりと離れた。指先が、遥の膝から滑り落ちる。残る温もり。遥の息が、ようやく整う。綾乃は立ち上がり、雑誌をテーブルに置いた。「おやすみなさい」。静かな声。リビングを後にする。足音が、廊下を遠ざかる。ストッキングの擦れが、かすかに響く。

 遥はソファに残り、体を沈めた。膝に残る感触。指の圧。秘部の疼きが、頂点に達しそうになる。手で押さえ、息を殺す。雨音だけが、耳に残る。夜が深まる。

 自室に戻った遥は、ベッドに横たわる。体が熱い。膝の温もりが、消えない。下半身の秘密が、激しくざわめく。目を閉じると、綾乃の仕草が蘇る。ストッキングをなぞる指。膝に落ちる手。息の重なり。遥の唇を、噛む。熱が、静まるまで、長い時を要した。

 その夜、遥は綾乃の部屋の扉が閉まる音を聞いた。薄い壁越しに、気配を感じる。綾乃はベッドに就いたのだろう。遥の耳に、かすかな息づかいが届く気がした。いや、それは自分の息か。暗闇の中で、遥は天井を見つめる。

 綾乃の部屋で、彼女は独り枕に顔を寄せていた。唇が、わずかに湿る。舌先でなぞる仕草。無意識に。遥の膝の感触を思い、息が乱れる。黒ストッキングを脱いだ脚が、シーツに絡む。瞳を閉じ、唇の端に熱が残った。

 翌朝、二人の視線が、再び交わる予感がした。

(第3話へ続く)