如月澪

上司の視線に女装が溶ける(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:スカートの裾で震える息

 雨の音がアスファルトを叩く夜の街路を、美香の車で走った。助手席に座る健太は、ドレスの裾をそっと押さえ、窓ガラスに映る自分の姿を盗み見た。メイクされた顔が、街灯の光にぼんやり浮かび、ウィッグの髪が肩に落ちる。オフィスを出た時、美香の指が自然に健太の手を引いた感触が、まだ掌に残っていた。心臓の鼓動が、雨音に混じって静かに響く。

 美香の家は、都心のマンション。高層階の部屋に着くと、彼女は鍵を開け、柔らかな照明を灯した。リビングは洗練されたインテリアで、窓からは夜の街並みが広がる。平日遅くの静寂が、都会の気配を遠くに押しやっていた。美香はコートを脱ぎ、キッチンでグラスにワインを注ぐ。黒いタイトスカートが、彼女の腰のラインを際立たせ、歩くたびにわずかに揺れた。

「座って、健美さん。まずはこのメイク、直しましょう。少し崩れてるわ」

 美香の声は穏やかで、いつもの上司のトーンに甘い響きが加わっていた。健太はソファに腰を下ろし、ドレスの裾が膝上で止まるのを意識した。彼女は隣に座り、メイク落としを手に取る。指先が健太の頰に触れ、優しく円を描く。オフィスでの感触を思い出す。息が近く、ワインの香りと彼女の体温が混じる。健太の喉が、わずかに動いた。

「美香さん……本当にいいんですか? こんな時間に」

「いいのよ。あなたが来てくれて、嬉しいわ。イベントの後、ずっとこの姿のあなたが頭から離れなくて」

 彼女の瞳が、健太の顔をなぞるように見つめる。メイクを落とす手が止まり、ドレッサーからより本格的なメイクセットを取り出した。ファンデーションを丁寧に塗り直し、アイラインを細く引き、チークを淡く乗せる。ウィッグを整え、長いまつげを付け替える。美香の指が、耳元、首筋を滑るたび、健太の肌が熱くなった。ドレスの肩紐がずれ、彼女が直す。布地の下の素肌が、敏感に反応する。

「もっと可愛くしてあげる。あなた、こんな姿が似合う体してるのね。細くて、しなやかで」

 美香の息が、首筋にかかる。彼女は立ち上がり、クローゼットから別の衣装を持ってきた。淡いブルーのワンピースドレス。オフィスのピンクのものより、裾が少し短く、タイトなシルエット。「これに着替えてみて。あなたにぴったりよ」。健太は頷き、隣の寝室で着替えた。鏡に映る姿は、より女性らしく、腰のくびれが強調される。スカートの裾が太ももを覆い、歩くたびに生地が肌を撫でる。

 リビングに戻ると、美香が待っていた。彼女の視線が、健太の全身をゆっくり巡る。膝から裾へ、足首へ。ソファに座るよう促し、自分も隣に寄り添う。グラスを傾け、ワインを一口。部屋に静かな音楽が流れ、雨音がBGMのように響く。

「素敵……本当に。健太くん、普段のスーツ姿もいいけど、このあなたは別格ね」

 美香の指が、健太の膝に置かれた。スカートの裾を、優しく撫でるように動く。布地がずれ、素肌に触れる感触。健太の身体が、わずかに震えた。オフィスでの視線が、ここで現実の触れ合いになる。彼女の指は止まらず、膝の内側へ、ゆっくりと這う。意図的な優しさ。健太の息が浅くなり、ドレスの胸元が上下する。

「美香さん……っ」

 声が上ずる。彼女は微笑み、顔を近づけた。唇が触れそうで止まる。代わりに、指がスカートの裾を少し持ち上げ、太ももの肌を露わにする。柔らかな感触が、空気に触れ、健太の芯が熱く疼いた。美香の息が熱く、耳元で囁く。

「こんなあなたが、欲しかったの。オフィスでずっと、想像してた。女装したあなたを抱きしめたいって」

 告白の言葉に、健太の心が揺れた。普段の距離感──デスク越しの上司と部下。それが今、溶け出す。彼女の指が、太ももの内側をなぞる。震えが走り、健太は無意識に足を閉じかけたが、美香の手が優しく足を開いた。合意を確かめるような視線。健太は目を伏せ、頷いた。拒否など、考えられなかった。この熱に、身を委ねたい。

 美香は健太の腰を引き寄せ、膝の上に抱きかかえるように座らせる。ドレスの裾が捲れ上がり、彼女のタイトスカートの太ももに肌が触れる。互いの体温が、布地越しに伝わる。彼女の指が、背中を撫で、肩紐をなぞる。キスはまだ、唇が触れそうで止まる。息が混じり、部屋の空気が甘く重くなる。健太の身体が、彼女の胸に寄りかかる。心臓の音が、互いに聞こえそう。

「感じてるのね……ここ、熱いわ」

 美香の手が、スカートの奥へ滑り込む。健太の下着に触れ、優しく包むように動く。震えが頂点に近づき、息が乱れる。彼女の唇が、首筋に触れ、軽く吸う。痕を残さない、控えめな愛撫。健太の指が、美香のブラウスを握る。ボタンを外したくなる衝動を抑え、ただ彼女の肩を抱く。日常の延長で生まれる、この疼き。オフィスの視線が、ここで身体の熱になる。

 音楽が低く流れ、ワインのグラスがテーブルに置かれたまま。雨が強まり、窓を叩く。美香の動きが速くなり、健太の身体が弓なりに反る。頂点が近づくが、彼女はそこで止めた。指を抜き、健太の頰を撫でる。瞳が絡みつく。

「まだよ……続きは、次にね。こんなあなたを、もっと味わいたいわ」

 唇が、ようやく触れた。柔らかく、短いキス。健太の身体に、甘い疼きが残る。彼女の家を出る頃、外は雨が上がり、街灯が濡れた路地を照らしていた。車で送られ、オフィス近くの自宅へ。ベッドに横たわり、ドレスの感触を思い出す。美香の息、指の熱。心がざわつき、眠れぬ夜。次なる夜が、静かに予感される。

(第3話へ続く)