篠原美琴

隣人妻の黒ストッキング温泉絶頂(第3話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第3話:マンションのストッキング息遣い

エレベーターの扉が閉まる音が、静かに響いた。浩太と遥は肩を並べ、マンションの夜の空気に包まれていた。湯上がりの浴衣姿から着替え、遥はいつものブラウスとスカートに戻っていたが、黒ストッキングは履き直していない。素足にパンプスを履いた脚が、歩くたび柔らかく揺れる。温泉からの帰り道で肩が触れ合った余韻が、まだ二人の間に残っていた。浩太の心臓は、規則正しく速く鳴っている。遥の視線が、エレベーターの壁越しに自分を捉えているのを感じる。

「今日は、本当に楽しかったです」

遥の声が小さく響く。浩太は頷き、言葉を探す。

「僕も。遥さんのおかげです」

沈黙が再び訪れる。エレベーターが三階に着き、扉が開く。浩太の部屋、百二号室の前。隣の百三号室は、遥の住処だ。浩太は自然に、自分の部屋の鍵を取り出す。遥が足を止め、視線を上げる。瞳に、湯煙の熱がまだ宿っているようだ。浩太の胸に、ためらいがよぎる。ここで別れるか。それとも。

「よかったら、上がってコーヒーでも」

言葉が口をついて出た。計画などない、衝動的な誘い。遥は一瞬、目を伏せ、唇を軽く噛む仕草を見せる。拒否か。だが、彼女の頰がわずかに紅潮し、静かに頷いた。

「ええ、少しだけなら」

ドアが開き、二人は浩太の部屋に入った。リビングは簡素で、ソファと小さなテーブル。照明を柔らかく落とし、浩太はキッチンでコーヒーを淹れる。遥はソファに腰を下ろし、パンプスを脱いだ。素足が床に触れ、温泉の記憶が重なる。浩太はマグカップを二つ持ち、テーブルに置く。遥の隣に座る。距離は十五センチほど。湯上がりの体温が、服越しに伝わってくるようだ。

コーヒーの湯気が立ち上る中、二人は無言でカップを口に運ぶ。遥の指がカップを握る様子が、細やかだ。浩太は視線を落とし、彼女の脚に目をやる。ストッキングを脱いだ素肌が、スカートの裾から覗いている。滑らかで、湯に濡れた後の艶が残るよう。温泉で見た、あの脱ぎ仕草。指が膝を滑り、生地をゆっくり引き下ろす瞬間。浩太の喉が乾く。遥の視線を感じ、顔を上げる。二人の目が合う。長く、深く。

「夫は、今週末まで出張なんです」

遥がぽつりと呟いた。沈黙を破る言葉。浩太の胸に、合意の予感が広がる。彼女の瞳に、迷いと期待が混じる。浩太はカップを置き、ゆっくり手を伸ばす。遥の手に触れそうで、止まる。彼女は動かない。むしろ、指先を軽く開くように。浩太の指が、遥の手に触れた。柔らかく、温かい。湯上がりの熱が、まだ残っている。互いの息遣いが、部屋の空気を濃くする。

遥の頰が、明らかに紅潮した。視線を逸らさず、浩太を見つめる。沈黙が続く中、浩太は体を寄せる。肩が触れ合う。服越しの感触が、温泉の素肌を思い出させる。遥の息が、少し速くなる。浩太の視線が、彼女の唇に落ちる。薄く開き、吐息が漏れる。ためらいが、二人の間に渦巻く。この距離を、縮めていいのか。隣人であり、人妻。だが、温泉での肩の触れ合い、無言のコーヒーシェア。あの瞬間から、関係は変わり始めていた。

浩太の手が、遥の頰に近づく。指先が、肌に触れる。柔らかく、火照っている。遥の目が細まり、閉じかける。唇が、わずかに近づく。息遣いが混じり合う距離、五センチ。部屋の空気が、張り詰める。遥の指が、浩太の膝に置かれる。軽く、だが確実に。合意のサイン。沈黙の中、互いの視線が熱を帯びる。浩太の心に、期待が膨らむ。この一線を越えれば、戻れない。だが、遥の微笑みが、それを許す。

ふと、遥の唇が動いた。言葉にならない吐息。「……浩太さん」。名前を呼ぶ声に、甘さが混じる。浩太の指が、彼女の髪を梳く。黒いストッキングの記憶が、蘇る。いや、今は素肌。だが、遥が立ち上がり、鞄から何かを取り出す。予備のストッキングだった。無言で、ソファに座り直し、ゆっくり履き始める。細い指が、つま先から生地を滑らせる。膝まで引き上げ、光沢が脚を覆う。浩太の視線が、釘付けになる。あの仕草に、胸が疼く。

ストッキング姿の遥が、再び隣に寄る。黒い生地が、照明の下で艶めく。浩太の手が、自然に彼女の膝に落ちる。生地越しの感触。滑らかで、温かい。遥の体が、わずかに震える。頰の紅潮が深まる。視線が絡み、唇が近づく。沈黙の緊張が、頂点に達する。互いのためらいが、溶けていく。遥の夫の不在を明かした今、ここは二人の空間。合意の空気が、部屋を満たす。

コーヒーの残り香が漂う中、遥の指が浩太のシャツの襟を軽く引く。無言の誘い。浩太の胸に、熱い波が広がる。この夜が、どこへ向かうのか。唇が触れ合う寸前、遥の目が輝く。期待と、静かな決意。浩太は目を閉じ、ゆっくりと近づく。部屋の時計が、静かに時を刻む。次の瞬間、二人の距離が、ゼロになる予感がした。

(第4話へ続く)