藤堂志乃

女社長のNTR正常位絶頂(第2話)

この作品は18歳未満の方の閲覧を禁止します。フィクションであり、現実の人物・事件とは一切関係ありません。

## 第2話:残業の吐息と触れ合う指先

オフィスの照明が薄暗く、深夜の静寂を包む。美佐子はデスクに肘をつき、拓也の提案した資料を眺める。あの夜の「送って帰る?」という言葉に、彼は「社長こそ、お疲れのところです」と微笑み、結局タクシーで別れた。それから一週間、残業は連日続く。プロジェクトのプレッシャーが二人をオフィスに縛りつける。美佐子は夫の浩一の顔を思い浮かべるたび、胸に鈍い痛みが走る。義理の夫婦で血のつながりはないのに、12年の積み重ねが重荷のように感じる。浩一の視線は変わらず霧。朝食のテーブルで新聞をめくる姿は、安定した習慣そのものだ。

拓也の存在が、その霧を少しずつ溶かす。28歳の彼は、熱心に資料を修正し、美佐子の意見を求める。視線が交わるたび、空気が微かに震える。「社長の視点が鋭いんですよ」と彼が言う声に、褒め言葉以上のものが宿る。美佐子は微笑み返すが、心の中で動揺が渦巻く。夫とは何年も、こんな風に言葉を交わしていない。浩一との会話は業務連絡のよう。ベッドの端で背を向け、互いの体温さえ遠い。

今夜も二人きり。時計は22時を回る。美佐子はコーヒーカップを手に、拓也の隣に腰を下ろす。デスクを挟まず、ソファスペースだ。資料の最終調整で、自然と距離が縮まる。「ここ、数字の根拠をもう少し詳しく」と彼女が指差すと、拓也の肩が近づく。息遣いが聞こえるほど。美佐子は視線を資料に固定するが、意識は彼の体温に奪われる。夫の浩一は、こんな距離で座った記憶がない。安定が、退屈を生んだのかもしれない。

「社長、最近お疲れじゃないですか? 浩一さん、ご心配されてるんですか?」拓也の言葉が、唐突にプライベートを覗く。美佐子はカップを置く手が止まる。浩一の名前を口にされ、心がざわつく。「ええ、まあ……。彼は仕事が忙しくて。互いに干渉しないのが、夫婦のルールみたいなものよ」言葉が自然に零れる。吐露した瞬間、胸のつかえが少し軽くなる。拓也は静かに頷き、目を細める。「それは寂しいですね。社長みたいな方が、そんな扱いなんて……。もっと、大切にされるべきですよ」その声に、優しさが滲む。美佐子は視線を上げ、彼の瞳に映る自分を見る。熱い、包み込むような光。夫の目にはないものだ。

沈黙が流れる。資料のページをめくる音だけが響く。美佐子の心は揺れる。吐露したことで、拓也に心を開きかけてしまった自分に気づく。浩一の無関心が、こんなにも傷ついていたなんて。拓也の手が資料を指し、彼女の指先に触れる。偶然か、意図か。柔らかな感触が、電流のように伝わる。美佐子は手を引こうとするが、ためらいが起きる。その指先の温もりは、夫の握手より生々しい。冷たく事務的な浩一のそれとは違う、脈打つような熱。

「すみません」拓也が囁くが、手を離さない。いや、離すのを待っているようだ。美佐子の息が浅くなる。空気が濃くなり、甘い緊張が満ちる。視線が絡み、互いの吐息が混じり合う距離。彼女は目を伏せ、心臓の鼓動を抑えようとする。でも、期待が胸の奥で膨らむ。この熱に、身を委ねたい衝動。夫の影がちらつくが、今は霧のように薄い。拓也の指が、そっと彼女の手に重なる。震えが伝わる。美佐子は抵抗せず、ただその感触を味わう。ためらいと、甘い疼きが交錯する。

ふと、スマホが鳴る。画面に浩一の名前。美佐子は一瞬、指を絡めたまま固まる。拓也の視線が彼女を捉え、静かに促すように。「出なくていいですよ。今は、ここにいるんですから」その言葉に、背徳の甘さが加わる。美佐子は着信を無視し、スマホを伏せる。浩一の声など、聞きたくない。この瞬間、拓也の吐息が首筋に感じられるほど近い。熱い息が肌を撫で、心の扉がさらに開く。夫の無関心を、拓也の優しさが埋めていく。

作業は進まず、二人はソファに寄り添うように座る。話題は仕事から、互いの日常へ。拓也の過去、夢、彼女の知らない一面。美佐子は笑みを浮かべ、自身の孤独を少しずつ明かす。指はまだ触れ合ったまま。夜が深まる中、日記のことが頭をよぎる。今夜はどんな言葉を? 指先の震え、夫の握手より生々しい。ふと、そんな内省が浮かび、唇が自嘲的に緩む。まるで日記のユーモラスな誤記のように。生々しいなんて、随分と大袈裟。でも、その震えが、抑えきれない渇望を物語っていた。

残業の終わりが近づく。拓也の視線が、より深く美佐子を求める。「社長、もう少し……話しましょう」その言葉に、秘密の共有を予感させる響き。美佐子は頷きかける。胸の期待が、次なる一歩を促す。この熱が、どこへ導くのか。オフィスの扉が閉まったまま、二人の夜はまだ続く。

(第3話へ続く)